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JACの取組み・活動レポート

2024/04/04

2023年度「外国人材とつくる建設未来賞」<受入企業/団体部門>表彰式レポート

受入企業による未来志向の取り組み

受入企業による"未来志向"の取組み

2023年12月20日(水)、2023年度建設未来賞の表彰式が開催されました。
今回受賞された企業のコメントやインタビューを紹介します。

受賞企業紹介

外国人材育成賞&事業展開賞 株式会社菅原設備

株式会社菅原設備では、受入れを継続する中で「言葉が通じないと教育ができない。これでは会社にも外国人にもメリットが少なくなる」と考え、日本語教育に力を入れることにしました。日本語学習教室の運営やeラーニングシステム(AI翻訳付き多言語教育ソフト)の開発など、次々と新しい事業や施策を展開しています。また、帰国した外国人が活躍できる場として、ベトナムやミャンマーに支店を立ち上げ、海外への展開を果たしています。今回、そうした多岐にわたる活動が高く評価され、外国人材育成賞と事業展開賞の2部門を受賞しました。

外国人材育成賞 株式会社中鉃

株式会社中鉃は、鉄筋加工・組立に必要な育成基礎プラン(資格取得計画、社内勉強会、資格取得受験)をもとに一人ひとりの育成を行っているのが特徴です。また、日本語教育にも熱心で、日本語レベルN4、N3、N2取得までの目標期間を定めており、N3取得までは契約している日本語教師による研修を会社負担で受講させています。日本語検定の試験前には労働時間を活用して勉強する機会を設けている点や、合格時には全社員の前で表彰して合格祝いを贈り、モチベーションを高めている点なども評価され、外国人材育成賞を受賞しました。

外国人材育成賞 事業展開賞 外国人材育成賞&事業展開賞

株式会社TK建装

株式会社菅原設備

外国人材育成賞 外国人材育成賞

株式会社兼藤

株式会社三浩総産

株式会社中鉃

事業展開賞 事業展開賞

株式会社KND
コーポレーション

株式会社菅原工業

受賞企業コメント

株式会社菅原設備
外国人材育成賞 事業展開賞

この度は栄誉ある賞を頂き誠にありがとうございます。設備業をメインに23年間事業を営んできたなかで、様々な問題がありました。建設業全般に言えることですが、人手不足が大きな課題です。その中での外国籍の方々の就労は非常に心強く助かっております。これからも外国籍の方々のみならず、社員全体の満足を目標に会社を上げて取り組んでまいります。

株式会社TK建装
外国人材育成賞 事業展開賞

外国人材を雇用して早10年、信頼を築く為日本に来る実習生たちは必ずベトナムのご家族を訪ね面会を重ねて交流を深めて参りました。座学・実地訓練による育成で技術向上を図り、今では日本人と共に技能試験を受験し合格するまでに成長しております。
実習生達が帰国後に日本との施工方法、質の違いで現地会社と折り合いがつかず、折角学んだ技術を活かす事が出来ないという状況を知り、弊社で活躍の場を作りこの問題を打破できればという思いで今は法人設立を準備中です。このような賞を頂けて大変光栄に思います。

株式会社兼藤
外国人材育成賞

この度は、輝かしい賞を頂戴し誠に光栄に思います。 2015年に受入を始め9年目となり、現在、特定技能外国人を含め19名の多くの若者が在籍しております。今後もこれまでの経験を活かし社員一同、新しい仲間たちと一緒に更に活躍が拡げれる様に精進して参ります。

株式会社中鉃
外国人材育成賞

当社が取り組んできた外国人の技能向上・育成が評価され、大変名誉ある賞を頂き光栄に思います。今後も建設業界の重要な担い手である外国人材の育成や技能向上・労働環境向上に会社を挙げ努めてまいります。

株式会社三浩総産
外国人材育成賞

この度は、「外国人材育成賞」を頂きまして誠にありがとうございます。兼ねてから、昨今の人材不足に悩まされ外国人材との共生を念頭に尽力してまいりました。私たちの取組みが評価され、今まで行ってきたことが正しい方向であったと認識し、さらに今後の育成について、なお一層の研鑽を重ねてまいります。 ライフラインに携わる者として確かな品質と迅速な対応、また次世代に技術の継承をすることも大切だと考えます。若い世代また外国人の育成にも邁進し『やれること・やりたいこと、またやらねばならぬこと』を見極め活動してまいります。日本では人材不足が慢性化し、今後も生産能力に影響を及ぼすでしょう。 私たちは人手を外国人の方に依存することも必要になると考えます。これからも『外国人に選ばれる企業になる』ことに注力し社内の構造改革を怠らないよう努力してまいります。ありがとうございました。

株式会社菅原工業 事業展開賞

地域の課題である、人口減少からくる人手不足の解消と今後の事業展開を考え、外国人技能者の制度を活用しました。外国人技能者を一従業員として迎える事で、社内での多様性の意識付けの機会を得ました。この取組がこのような賞をいただき心より感謝いたします。

株式会社KNDコーポレーション
事業展開賞

この度、「外国人材と作る建設未来賞・事業展開賞」を受賞致しました。これは弊社「物工人®ソリューション」に対する、建材メーカー・ハウスメーカー等、建設関連各社の皆様の暖かい御支援の賜物と、心より感謝しております。また、こうした得難い機会を頂いた国土交通省御担当部門の方々にも、厚く御礼申し上げます。

受賞企業インタビュー① 株式会社菅原設備

事業展開賞

事業展開賞

外国人材が現地法人を設立

代表取締役社長 >菅原 直樹

現在、運営している日本語教室について教えてください

外国人に日本語を教えていた教室を子会社化し、当社の外国人はもちろん、他社の技能実習生や特定技能にも事業として日本語学習を提供しています。現在は、建設業や自動車整備の企業が利用しており、これまでは口コミで展開していたのですが、今年から積極的に営業活動を開始しました。

日本語教室では具体的にどのような学習を行っていますか?

受講生には週2回のペースで配布しているプリントに取り組んでもらいます。あとは月に1回、オンラインで2時間の日本語講座を行っています。ポイントは、入国する2カ月ほど前から受講してもらうこと。入国をする時には会話がある程度できるレベルまで持っていくことに注力しています。

海外展開もされていますね

ミャンマーとベトナムに現地法人を立ち上げました。ただし、ミャンマーの会社はコロナの影響や国内情勢が不安定なこともあって、現在はストップしている状態です。一方、ベトナムの会社は当社の設計業務を専門に請け負ってもらっています。現在は当社の工事に関する設計の80%をベトナムの会社で行っています。

現地法人の立ち上げで苦労した点は?

実はベトナムの会社に関しては、立ち上げに関するほとんどの業務を現地にいるベトナム人の社長が進めてくれました。特定技能だった彼が日本から帰国する際に、ベトナムで会社を立ち上げたいというので任せてみたところ、1週間で事業計画書を書き上げてきたんです。登記から採用まで準備してくれたのでとても助かりました。現在は、設計以外にも現地で工事を受注できる体制づくりを進めている段階です。

菅原ベトナムで働くスタッフ

外国人材育成賞

外国人材育成賞

相談窓口を作り働きやすい職場へ

経営企画室 >中駄 康博

育成方法が評価されての受賞となります

ありがとうございます。当社では入社1年目は日本語学習をはじめ、日本の文化や生活習慣について学んでもらっています。2年目から資格の取得、そして3年目からは、職長教育に注力するといったように、明確な計画を立てて進めています。

育成に力を入れるようになったきっかけは?

受入れ当初、課題になったのが日本人と外国人が協力し合う関係の構築でした。日本語が苦手で、技術が未熟な外国人への偏見をなくすこと。まずはそれを目標に、日本人の管理者に私の「外国人を大切に育てていく」という理念をしっかり理解してもらいました。人を大事にする、それを我が社の魅力や強みにしていこうと進めたのがきっかけです。今では全社員に浸透しています。

育成で工夫している点は?

今、準備しているのが動画学習システムです。現場で使える技術や知識を動画にまとめてオンラインで学習する体制づくりを進めています。工具の使い方といった基礎的なことや、安全衛生に関する注意事項、作業工程の理解などカリキュラムを作成し、入社前の研修、入社後の復習、より高度な技術研修といった段階別に取り組める内容にする予定です。動画の編集作業は社内で専属チームを立ち上げ、少しずつですが体制を整えている最中です。

職場環境の向上にも力を入れていますね

産業カウンセラーの資格を持つ社員が定期的に面談を行い、悩みやキャリアプランの相談に乗っています。また、相談窓口を一つではなく複数作ることが大事だと思っていて、SNSでのグループ以外に個人的にいつでも連絡がつくようにもしています。そのほか、会社に言いづらい内容であれば、支援機関や組合に相談するように勧めることもしています。実際に私に個別で連絡をくれる人もいて、うまく機能していると感じています。

受入れ後の研修の様子

受賞企業インタビュー② 株式会社中鉃

外国人材育成賞

外国人材育成賞

目標はつくるが強制しない育成を

専務取締役 >今森 茂美

必要な技能資格や各種免許などを明記した評価制度を策定されていますが、そのきっかけを教えてください

せっかく受け入れても手元作業ばかりでは外国人も働きがいがないという考えが根底にあります。なので、来日したらすぐに現場で必要な資格の技能講習・特別教育を取得してもらうようにしています。彼らに有資格者の責任や喜び・達成感を得てもらいながら、技術力を確保しようというのが目的です。

日本語教育にも力を入れていますね

週に1回会話力UPに特化した講座をしております。こちらは、3~4名ずつのグループで講師の方と楽しみながら授業をしております。また、日本語検定試験の3カ月前から対策講座をオンラインで受講しており、社員と予習を行いながら、各々が事前に理解度を確認・把握し授業に臨むことで、授業への姿勢が変わり、質問事項も明確になっているため、理解度が飛躍的に高まります。

育成で注意していることは?

当社では技能実習生の期間にN4合格、特定技能1号ではN3合格を目指して学習に取り組んでもらっています。ですが、日本語が苦手な人がいるのも事実で、その場合は強制しないようにしています。あまりプレッシャーをかけ過ぎても当人が思いつめてしまうので、あくまで目標に留めています。

現在、2カ国から受入れていますが、多国籍化してよかった点は?

共通言語が日本語になるので、言葉の上達スピードが上がるようになりました。また、お互いに日本語レベルを上げようと、競争心が芽生えているように感じます。その中で私が注意しているのは、不公平な評価をしないこと。彼らは差別に対して非常に敏感ですが、どうしても日本人はその点の感覚が鈍いようです。公平性には常に気をつけています。

2号特定技能外国人が技能実習生の教育を担当

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私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。