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JACの取組み・活動レポート

2025/02/28

2024年度「外国人材とつくる建設未来賞」<受入企業/団体部門>表彰式レポート

自社だけでなく地域や業界にも貢献

自社だけでなく地域や業界にも貢献

2024年12月24日(火)、2024年度建設未来賞の表彰式が開催されました。
今回受賞された企業のコメントやインタビューを紹介します。

受賞企業紹介

外国人材育成賞&事業展開賞 株式会社高知丸高

株式会社高知丸高は、四国で外国人向けの技能講習を受けられる施設が少ないという課題に着目し、独自に外国人労働者向けの教習所「高知建機技能センター」を設立しました。フォークリフトや玉掛けなど5つの資格コースを5カ国語対応で提供し、人材育成に尽力しています。また、特定技能外国人に対する教育手当や福利厚生の充実を図り、技能者としてのキャリアアップを後押し。さらに、技能講習の合格率向上や安全教育にも力を入れ、長期的な視点で取組みを実施。こうした包括的な活動が評価され、事業展開賞と外国人材育成賞の2部門を受賞しました。

外国人材育成賞 矢島鉄筋工業株式会社

矢島鉄筋工業株式会社は、外国人材育成を積極的に行い、業界全体のスキルアップにも貢献しています。同社は、特定技能外国人の資格取得を支援し、1級・2級鉄筋施工技能士試験対策の集中講座を提供。講座では日本語教育にも力を入れ、合格率を高める独自のカリキュラムを作成しています。また、社外の外国人向けに資格取得を目的とした講習会を開催し、多様な国籍の就労者が参加できる環境を整備。業界全体としてキャリア形成を支援する体制を構築し、人材の成長を長期的にサポートしています。その先進的な取組みが評価され、外国人材育成賞を受賞しました。

外国人材育成賞 事業展開賞 外国人材育成賞&事業展開賞

株式会社高知丸高

外国人材育成賞 外国人材育成賞

株式会社タカラ

株式会社手塚工務店

日本興志株式会社

矢島鉄筋工業株式会社

事業展開賞 事業展開賞

株式会社森建設

審査委員長特別賞 審査委員長特別賞

一般財団法人
戸田みらい基金
(戸田建設株式会社)

株式会社竹中工務店
及び竹和会

受賞企業コメント

外国人材育成賞 事業展開賞
株式会社高知丸高

この度は栄誉ある賞をいただき、誠に光栄に存じます。
外国人労働者の受入れを契機として、職員は多文化共生社会に対する認識を深めています。これからも外国人材が安心安全に働けるよう、知識技能や日本語を、丁寧に指導教育し、お互いの文化や価値観に対する理解と尊重を深め、相互信頼関係を築くことに注力して参ります。
全国の外国人技能者を対象に、公的資格の取得を促し、長く日本で安全に、安心・満足して働ける環境を作り、日本の人手不足が解消してくれることを願い、外国人向けの技能講習センターを開設しました。これからも多くの国々の外国人材が受講できるよう、環境を整えていきます。

外国人材育成賞
株式会社タカラ

この度は栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。常に彼らと同じ目線に立ち、業務上のフォーマルな時間のみならず、インフォーマルな時間をも共有しながら、信頼関係を構築してきました。今後も外国人材の育成に、より一層力を入れると共に、彼らと共創・共生し続けて参ります。

外国人材育成賞
株式会社手塚工務店

この度は名誉ある賞をいただきまして誠にありがとうございます。インドネシア生受入れから16年、彼らが「やりがい」をもって、安心して働ける職場環境を目指し、社内学習の機会を提供し、日々人材育成に努めてまいりました。先輩から後輩へ受け継がれていく、いい流れができており、また彼らの団結力に支えられています。これからもメンバー、一人ひとりを大切にし、より優れた技能者を多く育てられるよう精進してまいります。

外国人材育成賞
日本興志株式会社

この度は名誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。私たちの活動が評価され、非常に光栄に思います。今後も、この賞を励みに、外国人材の母国と日本の発展に貢献できるよう、さらなる努力を重ねてまいります。引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。

外国人材育成賞
矢島鉄筋工業株式会社

この度は栄誉ある賞をいただき、ありがとうございます。約5年前から人材育成に力を入れはじめ、スキルアップ計画を進めています。来年には52名の技能士を育成し、「特定技能2号」技能者が、30名誕生するはずです。今後も、より一層の努力をしていきたいと思います。

事業展開賞 株式会社森建設

この度は「事業展開賞」の栄を賜り、深く感謝申し上げます。当社は、地方の建設業として、人材不足に対応するために約10年前より外国人建設人材の雇用を推進しています。今後も多くの外国人技能者と一緒に、建設業と地域の発展を目指し活動していきます。

審査委員長特別賞
一般財団法人戸田みらい基金
(戸田建設株式会社)

弊財団は「建設業の担い手不足」という課題に取り組んでいる、企業・団体に助成する事業を展開しています。この度弊財団の活動のうち、「外国人建設技能者の積極的雇用」や「外国人建設技能者のスピーチコンテスト」などを評価していただき感謝申し上げます。

審査委員長特別賞
株式会社竹中工務店及び竹和会

この度は栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。建設工事の担い手として外国人材の重要性が高まる中、竹中工務店と竹和会は、安全・技能の向上をはじめとする育成活動や会員企業による採用活動に取り組んできました。また、外国人材の人権を重視した働きやすい環境づくりに努めており、エンゲージメントの向上を目指しています。今後とも「外国人材に選ばれる建設業」の実現に向けて、活動を進めてまいります。

受賞企業インタビュー①
株式会社高知丸高

事業展開賞

四国初の多言語対応技能センター設立

代表取締役社長 >髙野 一郎

技能センターを設立された背景について教えてください

資格取得を支援する教習所が四国にはほとんどなく、受講者は大阪など遠方に行かざるを得ない状況でした。それに伴う移動コストの負担も大きく、四国の企業全体が同様の課題を抱えていました。そのため、既存の施設を活用して、コベルコ教習所松山教習センターの協力を得ながら新たに「高知建機技能センター」を立ち上げました。

既存施設を活用されたとのことですが、もともとどのような施設だったのでしょうか

以前は宿泊施設として運営していた場所です。温泉も備えた施設でしたが、コロナ禍の影響で営業が厳しくなり、現在は講習用の会場として再活用しています。ただし、宿泊施設として再開するには保健所の許可などが必要なため、現在は日帰り講習のみの対応です。できれば宿泊を再開し、遠方からの受講者も安心して学べる環境を整備したいのですが、それは今後の課題です。

提供しているコースや対応言語について教えてください

現在、フォークリフト、玉掛け、小型移動式クレーンなど5つの資格コースを開設しています。講習はベトナム語、ミャンマー語、インドネシア語、中国語、英語の5カ国語で対応しており、通訳を配置して受講者が安心して学べる環境を整えています。また、テキストの翻訳もサポートし、多国籍のニーズに応えています。

今後の展開についてはどのようにお考えですか

ゆくゆくはODA事業において、当社で働いた経験のある外国人と連携し、現地での活動を進めていきたいと考えています。例えば、ウガンダやパキスタンなどで行われている日本のODAプロジェクトに参画し、当社から派遣する技術者に加えて、帰国した元技能実習生や特定技能外国人を現地の作業員として採用すれば、よりスムーズな事業運営ができるはず。そんな展開が実現できればうれしいです。

写真:高知建機技能センター

高知県南国市の高知建機技能センター

外国人材育成賞

段階的育成と働きやすい環境づくり

育成に力を入れるようになったきっかけを教えてください

当社では17年前から外国人を受け入れています。当初は言葉の壁によるトラブルが多く、正直に言えば、受入れに反対する人が社内にいたのも事実です。職長たちからは「注意しても伝わらない」「事故が起きたらどうするんだ」という声がある一方、外国人からも「なぜ怒られているのかわからない」という意見も出ていました。この問題を解消するために、日本語教育の強化や資格取得によるスキルアップの体制を整備していきました。

モチベーションを高める工夫もされているようですね

特定技能外国人には昇給のほかに、教育手当や年3回の賞与を支給しています。また、社員旅行にも連れて行き、福利厚生を充実させています。このような取組みを通じて特定技能外国人への評価を明確にし、技能実習生が「自分も特定技能に移行したい」と思えるような環境を整えています。

具体的な育成内容や工夫している点を教えてください

現在は、特定技能外国人が後輩の指導を行う体制を整えています。母国語で指導できるため、新たに入国した技能実習生も安心して学ぶことができます。さらに、外国人は全員参加する年3回の安全大会を実施し、安全意識を共有しています。各言語対応の安全衛生教育動画も用意し、入社時や現場配属後の復習に役立てています。

職場環境の向上についても取り組まれていますね

産業カウンセラーの資格を持つ社員による定期的な面談を実施し、悩みや将来のキャリアプランについて相談できる機会を設けました。また、相談窓口はSNSグループや個別連絡を含め複数用意し、気軽に意見を伝えられる環境を整えています。さらに、社員旅行や懇親会を定期的に開催し、外国人就労者が職場でのつながりを深められるよう工夫しています。このような取組みにより、長期的な定着を実現しています。

写真:高知建機技能センターの教室

センター内での講習の様子

受賞企業インタビュー②
矢島鉄筋工業株式会社

外国人材育成賞

外国人材育成賞

高い合格率を実現する育成体制

代表取締役社長 >矢島 孝夫

技能資格取得に注力されていますが、その背景を教えてください

当社では、外国人材が特定技能2号を目指す際に必須となる1級鉄筋施工技能士の資格取得を目標に掲げています。ただし、1級は難易度が高いため、まず2級を取得し、その後に1級取得を目指すという段階的な育成を行っています。この取組みは約5年前から始まり、現在では多数の外国人材が資格取得に向けて取り組んでいます。

具体的な教育内容について教えてください

年間を通じて、玉掛けや高所作業車などの講習を外部機関と連携して実施しています。昨年は当社やグループ会社、また声をかけた企業を含め、400人以上の外国人がこれらの講習を受けました。1級・2級鉄筋施工技能士の資格取得を目指す講習では、特定技能外国人や技能実習生を対象に集中講座を6日間行い、学科4日・実技2日で徹底的に指導します。特に国家試験では漢字が多く使われるため、独自に作成した過去問ベースのテキストを用い、言語の壁を乗り越えられるよう工夫しています。

日本語教育にも力を入れているそうですね

今年からN5、N4、N3の各レベルに対応した日本語講座をスタートしました。月に2回、定年後の日本人スタッフを講師に迎え、ヒアリング強化を中心に学習を進めています。さらに、特定技能外国人の中から講師を選任し、日本語の勉強会を開催しています。試験に合格した場合、報奨金を支給することでモチベーションを高め、着実に成果を上げています。

今後の展望について教えてください

今後も外国人材が長期的に働き続けられる環境を整え、特定技能2号の取得を後押ししていきます。さらに、現場で必要となる資格を確実に取得させるとともに、職場内での公平な評価制度を維持し、安心して働ける職場づくりを進めていく方針です。

写真:社内講習の様子

講習では講師も受講生も一体となって取り組む

「外国人材とつくる建設未来賞」について

2023年度より、新たに国土交通大臣表彰として「外国人材とつくる建設未来賞」が創設されました。
この賞は、建設業における中長期的な担い手確保のため、外国人材の重要性はますます高まり、外国人材が日本の建設業を舞台に中長期的に活躍できる制度が立ち上げられ、また、その活用も進んできていることを踏まえ、今般、技能やコミュニケーションの習得が顕著な特定技能外国人、その育成に尽力された企業等、さらには、外国人材との接点を契機に新たな事業展開をされた企業の活動を称えるものです。2024年度は、優秀外国人建設技能者賞6件、外国人材育成賞5件、事業展開賞2件、審査委員長特別賞2件が表彰されました。

2024年度の人材育成賞と事業展開賞の募集内容は以下の通りでした。

【外国人材育成賞】

対象者
応募時点で、以下のいずれかに該当する企業もしくは団体

  • 継続的かつ効果的に外国人建設技能者の技能および就労環境向上に取り組んでいる企業、または団体等
  • 応募時点で、 外国人建設技能者を雇用している、またはそれらの者に対し技能訓練等を直接提供していること
  • 2023年度に外国人材育成賞を受賞していないこと

応募資格
自薦他薦を問いません。(他薦の場合には、募集対象の承認を得てください。)

【事業展開賞】

対象者
以下すべてを満たしている企業

  • 外国人建設技能者を現在雇用している、または過去に雇用していた企業
  • 平成31年4月1日から現在までの間に、当該外国人の受入れを契機に新たな事業を展開していること
  • 2023年度に事業展開賞を受賞していないこと

応募資格
自薦他薦を問いません。(他薦の場合には、募集対象の承認を得てください。)

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私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

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