JACマガジン

外国人労働者との働きかた

2026/02/24

建設業の三大災害について原因や安全対策を確認!

私が記事を書きました!

加納 素子

(一社)建設技能人材機構(JAC)

調査研究部 主任 / 管理部 / 広報部

加納 素子

(かのう もとこ)

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

建設業は、労働災害が多く発生しやすい業界です。
建設業の安全対策を考える上で、労働災害の理由や発生原因について知っておくことはとても大切です。

今回は、建設業の労働災害の中でも特に起こりやすい「建設業の三大災害」について解説します。
外国人労働者が働く現場でも役立つ安全対策についてもご紹介します。

重篤度の高い建設業の「三大災害」とは?

建設業における三大災害とは、特に発生件数が多く、死亡災害につながりやすい以下の3つの災害を指します。

  • 墜落・転落災害
  • 建設機械・クレーン等災害
  • 崩壊・倒壊災害

これらの災害は、建設業全体の労働災害において大きな割合を占めています。

三大災害に関わる死亡者数は以下の通りです。

  • 墜落・転落災害:86人
  • 建設機械・クレーン等災害:81人
  • 崩壊・倒壊災害:18人

※起因物による分類である「建設機械・クレーン等災害」の件数には、事故の型別の分類である「墜落・転落災害」と「崩壊・倒壊災害」の件数が重複計上されています。
建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害の発生状況」より作成

それぞれの災害について、以下の厚生労働省・国土交通省の資料などを参考に、詳しく解説します。
厚生労働省「労働災害発生状況」(2023年)
厚生労働省・国土交通省「建設業における安全衛生をめぐる現状について」

①墜落・転落災害

働く人が高所作業中に足場や屋根、開口部などから滑り落ちたり、手すりが外れて転落したりする事故です。
はしごや脚立からの転落も含まれます。

三大災害の中でも最も死亡災害につながりやすく、近年の建設業全体の死亡災害の約4割を占めています。
墜落・転落災害の中でも、屋根・屋上等の端や開口部からの墜落が約3割、足場からの墜落が約2割を占めます。

②建設機械・クレーン等災害

ブル・ドーザー、ドラグ・ショベル、ローラーなどの建設機械や移動式クレーンの操作中、またはその周辺で発生する事故です。

機械との接触や巻き込まれ、重量物の飛来・落下、建設機械やクレーン自体の転倒などの事故が多く見られます。
そのほか高温・低温物や有害物との接触事故、溺れによる事故、感電による事故などがあります。

建設機械・クレーン等災害による死亡者の内訳では、トラック、移動式クレーンと建設機械による事故が半数近くを占めます。

③崩壊・倒壊災害

建物や構築物、足場、土砂などが倒れたり崩れたりして働く人にあたる事故です。
積まれた資材の荷崩れなども含まれます。

掘削作業中の土砂崩れ、解体工事中の建物の倒壊、型枠支保工の崩壊などが主な事例です。
一度発生すると大きな被害につながりやすい特徴があります。

なお、崩壊・倒壊災害での死亡事故は、墜落・転落災害、建設機械・クレーン等災害に次いで多いですが、近年は建設業全体の死亡災害の約1割程度を占めています。

死亡災害の発生状況は以下の通り減少しています。

棒グラフ:1959年から2021年までの全産業と建設業の労働災害死亡者数推移

厚生労働省・国土交通省「建設業における安全衛生をめぐる現状について」より作成

2021年までの50年間の推移を見ると、全産業では約1/7、建設業では約1/9に減少しています。

  • 全産業:6,208人(1969年)→ 867人(2021年)
  • 建設業:2,492人(1969年)→ 288人(2021年)

※参考:厚生労働省・国土交通省「建設業における安全衛生をめぐる現状について」

しかし、建設業は他の業界に比べて死亡事故が多いことから、国が策定する労働災害防止計画においても重点業種として対策が進められています。

建設業で三大災害が多い理由は?発生原因も確認

建設業で三大災害が多く発生するのは、現場に危険が多く、さまざまな要因が重なりやすいためです。

三大災害が多い主な理由

建設業で三大災害が多い理由として、以下のような点が要因として挙げられます。

  • 高所作業の多さ
  • 大型機械の使用
  • 作業環境の変化
  • 現場の整備不足
  • 作業員の人的要因
  • 管理体制の不備
  • 外部環境の影響 など

建設現場では、建物の建設や改修など、高所での作業が日常的に発生するため、常に墜落・転落の危険にさらされているといえます。
クレーンなどの大型で強力な機械も多く使用するため、一瞬の操作ミスや周囲の確認の不足などが重大な事故に直結しやすいという特徴もあります。

また、掘削や解体など常に変化する現場状況では想定外の事態が発生しやすく、足場や手すりの設置不備、機械のメンテナンス不足なども事故につながります。
経験不足や安全意識の低さ、疲労による判断能力の低下など、作業員本人のスキルや意識、体調などが原因となることもあります。

さらに、作業員間のコミュニケーション不足、悪天候や繁忙期で安全管理計画を守らずに急いで作業を進めてしまうことなども安全確保を難しくする要因の一つです。

各災害の主な発生原因

三大災害それぞれの発生原因についても見ていきましょう。

墜落・転落災害の主な発生原因

墜落・転落災害の主な発生原因には以下のようなものがあります。

  • 高所作業:足場、屋根、開口部などからの滑落、バランスの喪失など
  • 安全帯の不使用・不適切な使用:安全帯の未着用や正しく装着されていない状態での作業
  • 足場・手すりの不備:不安定な足場、手すりの未設置や固定不足、老朽化など
  • 作業環境の不良:滑りやすい床、整理されていない作業場所、不十分な照明など
  • はしご・脚立からの転落:不適切な設置方法、誤った使い方など

建設現場での墜落・転落災害は、多くが安全対策の不徹底から発生しています。

まず、屋根の端や開口部からの墜落・転落に関して、特に小規模な工事の場合、安全対策に関する知識や経験が不足していることが原因となることが多いです。
また、法令で義務付けられている手すりの設置や、安全帯など墜落制止用器具の着用が適切に行われていない現状もあります。

足場での通常の作業中に発生する墜落・転落は、足場に手すりが設置されていなかったり、安全点検が適切に実施されていなかったりすることで発生する事例が多くあります。

建設機械・クレーン等災害の主な発生原因

建設機械・クレーン等災害の主な発生原因には、以下のようなものがあります。

  • 周囲の確認不足・死角の発生:オペレーターの確認不足や死角による接触事故など
  • 操作ミス・誤操作:不適切な操作、経験不足、疲労による判断ミスなど
  • 機械の点検・確認不足:点検の未実施や始業前点検の怠り、不具合の放置など
  • 用途外使用:本来の目的外で機械を使用することによる過負荷やバランスの崩れ
  • 誘導員の不足:大型機械の移動時やクレーン作業時の誘導員の不足や連携不足
  • 無資格者による運転:機械を運転・操作する資格を持たない者による運転

周囲の確認不足では、特にバック時の事故が多く報告されています。
建設機械やクレーン作業においては死角ができやすいことから、基本的には複数人で連携をとって作業をしますが、オペレーターと誘導員の連絡がうまくいかずに事故が起こることもあります。

また、用途外使用でよく見られるのは、ドラグ・ショベル(バックホー)で重い資材を吊り上げる、フォークリフトをクレーン代わりに使用する、ブル・ドーザーで牽引作業を行うなどの行為です。
こうした本来の用途と異なる使用例は、「適切な機械が手元にない」「作業を急ぎたい」「安全意識が薄い」といった理由で行われます。

崩壊・倒壊災害の主な発生原因

崩壊・倒壊災害の主な発生原因は、以下のようなものがあります。

  • 天災:台風、大雨、地震などの自然災害による構造物や足場の倒壊、土砂崩れ
  • 設計・施工不良:設計ミスや不適切な工法・資材による強度不足
  • 掘削作業の不備:土質調査の不足、適切な土留め措置をしなかったことによる土砂崩れ
  • 資材の不適切な管理:積み重ねられた資材の不安定な状態での放置、荷崩れ
  • 適切な作業手順の無視:手順無視や無理な作業による構造物の崩壊

崩壊・倒壊災害の原因は、大きく「人為的要因」と「自然災害要因」に分けられます。

「人為的要因」では、建物や構造物の強度不足、設計上のミス、資材の不適切な積み方などが挙げられます。
「自然災害要因」では、台風、大雨、竜巻などの悪天候により足場や仮設構造物が倒壊するケースが多く報告されています。

悪天候が予想される場合は、早めに作業を止める判断も必要です。

建設業の三大災害を防ぐための安全対策

建設現場での事故を防ぐには、現場に合わせた対策が必要です。
取り入れるべき基本の安全対策と、近年増加している外国人労働者の安全対策について、押さえておきたいポイントをご紹介します。

建設業の三大災害を防ぐための安全対策のポイント

建設業の安全対策として押さえておきたいのは、以下にご紹介する5つのポイントです。

1. 安全対策の徹底

基本は、労働安全衛生関係の法令を遵守して、現場における安全対策を徹底することです。

例えば、作業を始める前に「今日はどんな危険があるか」を作業員全員で確認する「危険予知活動(KY活動)」などです。
危険予知活動では、現場の状況や天候、作業員の体調など、その日の条件も考慮しながら現場に潜む危険を確認していきます。

また、作業手順書や工事計画の作成段階で行う「リスクアセスメント」も安全に工事を進めるために必要な対策です。
リスクアセスメントでは、危険要因の洗い出しからリスクの評価、対策の立案までを行います。

このように危険な箇所を事前に見つけて対策を立てることが、事故を未然に防ぐことにつながります。

2. 現場環境の整備

現場環境を整えることは、事故のリスクを大きく減らすことにつながります。

建設業の災害で多いのは墜落・転落です。
足場や作業床には必ず手すりを設置し、開口部には覆いや柵を設けて転落を防止しましょう。
高所作業時には、安全帯の正しい着用と使用を徹底させることも重要です。

また、建設機械・クレーン等災害を防ぐためには、機械の始業前点検を徹底し、異常があれば使用を中止しましょう。
重機作業時は誘導員を配置し、オペレーターとの間で明確な合図を決めておくことが重要です。

掘削作業での支保工の適切な設置や、資材の安全な積み方、仮設構造物の設計・施工管理の徹底は、崩壊・倒壊災害を防ぐために重要です。

3. 安全教育の強化

すべての作業員に対して、その作業に関連する安全教育を定期的に行うことが大切です。

特に、高所作業や重機操作、足場の組立て・解体作業など、危険や有害な業務に就かせる場合には、専門的な知識が必要です。
口頭で説明するだけでなく、実際にやって見せながら教えることで、安全な作業方法が身に付きます。

4. チェックリストの活用

厚生労働省が提供している「労働災害防止チェックリスト」を積極的に活用しましょう。
厚生労働省 労働災害防止チェックリスト

安全対策の抜け漏れを防ぎ、対策が確実に実施されているかを確認できます。

また、個々の作業での危険要因を網羅的に洗い出し、対策を客観的に評価することも可能です。

5. ヒヤリ・ハット防止対策(ヒヤリ・ハット運動)の推進

実際に事故には至らなかったものの、「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりした出来事(ヒヤリ・ハット事例)を積極的に報告・共有し、その原因と対策を検討することも効果的です。

作業員全員で学ぶ機会として活用し、危険を早期に発見し、実際の事故が起こる前に改善を試みましょう。

外国人労働者の安全確保における企業の注意点

近年、建設業では外国人労働者が欠かせない存在になっています。
厚生労働省がまとめた外国人雇用状況※によると、建設業で活躍する外国人の数は約17万8千人です。

厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

それに伴い、外国人労働者の死傷者数も増えています。
建設業で働く外国人労働者に必要な安全対策についても見ていきましょう。

言語の壁への対応

外国人労働者に対して指示を出したり危険箇所を伝える際、言語の違いが大きな壁になります。
日本語がうまく伝わらないことも多いため、内容を確実に伝えられる方法を選ぶことが大切です。

多言語対応の安全マニュアルの作成、通訳の配置、イラストを使用した掲示などを用いて、指示を正確に伝えられるよう工夫する必要があります。

文化・習慣の違いへの理解

安全に対する意識や習慣は国によって異なる場合があります。
日本の安全基準や作業ルールを丁寧に説明し、理解してもらうことが大切です。

このような現場では、「やさしい日本語」と呼ばれる、外国人がわかりやすい日本語での指示も重要です。
こちらで詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
やさしい日本語とは?例文や生まれた経緯などを紹介

JACでは、企業が外国人も日本人も共に働きやすい職場づくりを支えるために、さまざまな無料講座を開催しています。
異文化理解や外国人が理解しやすいやさしい日本語など、外国人スタッフのいる現場で役立つ情報が満載です。
日本人従業員向け「外国人共生講座」

過去の講座の開催レポート・見逃し配信・資料も公開しておりますので、あわせてご覧ください。

丁寧な安全教育の実施

言語や文化の違いを考慮し、丁寧でわかりやすい安全教育を繰り返し実施しましょう。
実演やOJTを取り入れることも効果的です。

外国人労働者に向けた安全教育については、こちらで詳しく解説しています。
外国人労働者のための安全衛生教育とは?活用できる教材もご紹介

JACでは、建設分野の特定技能外国人などを対象に、母国語での安全衛生教育や技能講習を無料で実施しています。
建設現場における外国人労働者への安全教育の一環として、ぜひご活用ください。
JAC安全衛生教育サポート(JACオンライン特別教育/JAC技能講習)

相談しやすい環境づくり

不安や疑問、困りごとを気軽に相談できる環境を整備することも大切です。
信頼できる相談窓口を設けたり、定期的な面談を行なったりすることで、外国人労働者が安心して働けるようにサポートしましょう。

まとめ:建設業の三大災害を防ぐには外国人労働者も含めた安全対策が重要!

建設業は、特に労働災害が起こりやすい業種です。
他の業界に比べ、死亡災害につながりやすい「墜落・転落災害」「建設機械・クレーン等災害」「崩壊・倒壊災害」の三大災害の発生頻度も多い傾向にあります。

三大災害が引き起こされる原因としては、高所での作業が多いことや安全管理の不足、機械の用途外使用、不適切な資材の積み方などさまざまですが、複数の要因が絡み合って事故につながるケースも多いです。

三大災害を防止するには、安全対策の徹底が大切です。
安全な作業環境を整備し、チェックリストの活用、ヒヤリ・ハット事例の共有なども積極的に行なっていきましょう。

また、近年建設業での活躍が増えている外国人労働者への安全対策も重要です。
外国人労働者の死傷者数も増えているため、外国人労働者にもきちんと理解してもらえる安全対策を考えていきましょう。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!
特定技能外国人のご紹介も行っております。

※このコラムは2025年6月の情報で作成しています。

この記事を書いた人

加納 素子

(一社)建設技能人材機構(JAC)

調査研究部 主任 / 管理部 / 広報部

加納 素子

(かのう もとこ)

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愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

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