JACマガジン

外国人労働者との働きかた

2025/09/12

建設業で在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人は雇用できる?

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

建設業界の人手不足が深刻化する中、外国人材の活用は重要な選択肢の一つです。

就労系の在留資格の一つに「技術・人文知識・国際業務(技人国)」がありますが、建設業においても「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人の雇用は可能なのでしょうか?

今回は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」はどのような業務が該当するのか、また、建設業で雇用することができるのか、雇用する上での注意点などについて解説します。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは?

在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」とは、日本で働く外国人が取得する就労系の在留資格の一つです。

この資格は、日本で専門的な知識やスキルを活かして働くことを目的とした外国人が対象で、大きく以下の3つの分野に分かれます。

  • 技術分野:理学・工学など自然科学系の知識や技術を必要とする業務
    例:エンジニア、建築士、土木技術者、電気技術者、航空宇宙技術者など
  • 人文知識分野:法律・経済・社会学など人文科学系の知識を活かす業務
    例:語学教師、マーケティング、人事、営業など
  • 国際業務分野:外国文化に関する素養を活かす業務
    例:通訳・翻訳、海外取引、広報、服飾デザインなど

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の取得の主な要件

取得の主な要件は以下の通りです。

①学歴または実務経験

分野によって、以下の学歴、実務経験が求められます。

【技術・人文知識】
原則として、関連する分野の大学卒業以上の学歴、または10年以上の実務経験が必要です。

【国際業務】
原則として、関連する分野の大学卒業以上の学歴、または3年以上の実務経験が必要です。

②業務内容と専門性の関連性

日本で行う業務が、学歴や実務経験で培った専門知識・スキルと関連している必要があります。

③その他

過去に入管法の違反がないことや、給与水準が日本人と同等であることなど、一般的な在留資格の審査項目も考慮されます。
これらの要件は総合的に審査されるため、申請時には根拠となる書類を整理し、専門性を明確に伝えることが大切です。

建設業で在留資格「技術・人文知識・国際業務」の外国人雇用は可能?

建設業においても在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人を雇用することは可能です。

この在留資格は、高度な専門知識やスキルを必要とする業務に従事する外国人を対象としています。
そのため、建設業においても、その専門性を生かせる職種であれば雇用することができます。

具体的には、以下のような業務に就くことができます。

営業

海外の建設会社や資材メーカーとの交渉、外国人顧客への営業活動など、語学力や国際的な知識を生かした業務が対象です。

事務

経理、人事、労務、法務など、大学などで専門知識を習得した人材が担当する業務が対象です。
それぞれの分野で高度な人文科学の専門知識が求められます。

管理

人事、財務、法務、経営企画などの部門で、法律、会計、経営管理などの専門知識を生かすことができます。
これらの分野を専攻している場合、業務との関連性が認められやすくなります。

施工管理

建築・土木系の大学や専門学校を卒業した外国人であれば、現場の工程管理、品質管理、安全管理などの業務を担うことができます。
ただし、直接的な現場作業は原則として認められません。

設計

建築士の国家資格を保有している外国人は、その専門知識を生かして建築設計業務に従事することが認められます。

通訳・翻訳

海外の技術者とのコミュニケーション、海外の建設技術に関する資料の翻訳など、語学力を生かした業務が対象です。

研究・開発

新しい建設技術や材料の研究開発に従事することができます。

海外取引業務

海外に支店や関連会社を持つ建設会社において、現地の企業や官公庁との交渉、工事請負に関する打ち合わせなどを行うといった業務が対象です。
高度な語学力とコミュニケーション能力、国際的な知識が求められます。

IT関連

BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)の導入・運用、社内システムの開発・保守など、情報系の知識を持つ外国人を雇用できます。

このように、建設業においても「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人は、その専門知識や語学力を生かしてさまざまな業務で活躍することが期待できます。

ただし、あくまで専門的な知識やスキルを必要とする業務が対象であり、単純な現場作業は原則として認められない点には注意が必要です。
現場作業の可否について、次で詳しくご説明します。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」では建設業の現場作業はできない!

建設業界における外国人材の雇用に関心が高まる中、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格で現場作業をお願いしたいお考えの企業さまもいらっしゃることでしょう。

しかし、原則として、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が建設業の現場作業に直接従事することはできません。

その理由は、この在留資格が「高度な専門知識や技術、国際的な業務に従事すること」を前提としているためです。
建設業における現場作業の多くは、これらの専門知識やスキルを直接的に必要とする業務とはみなされにくい傾向にあります。

例えば、型枠の組み立て、鉄筋の配置、コンクリートの打設といった作業は、主に技能や体力を伴う業務と判断されるため、「技術・人文知識・国際業務」の対象とはなりません。

もし建設業で現場作業を外国人に就いてもらいたい場合は、「特定技能」などの別の在留資格を検討する必要があります。

建設業で働ける在留資格は他にもある?

建設業で働くことができる主な在留資格は、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の他にもあります。
それぞれの在留資格で従事できる業務内容は異なるため、注意が必要です。

在留資格「特定技能」

人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の技能を持つ外国人の就労を認める在留資格で、「特定技能1号」「特定技能2号」があります。

特定技能は、一定の技能試験に合格するなど、技能水準が証明された外国人が対象です。
また、受入企業による支援体制も義務付けられています。

建設業も対象分野の一つであり、「土木区分」「建築区分」「ライフライン・設備区分」の業務区分で、現場作業を含む幅広い業務に従事できます。

土木区分

道路、橋梁、トンネル、河川、港湾などの土木施設の建設、維持、修繕などに関する作業(型枠施工、鉄筋施工、コンクリート圧送、建設機械施工、土工、とびなど)およびその関連業務が該当します。

建築区分

建築物の新築、増築、改築、修繕などに関する作業(型枠施工、左官、鉄筋施工、内装仕上げ、屋根ふき、とび、建築大工、建築板金など)および、その関連業務が該当します。

ライフライン・設備区分

電気通信、ガス、水道、電気などのライフライン・設備の整備、設置、変更、修理などに関する作業(電気通信、配管、建築板金、保温保冷など)および、その関連業務が該当します。

在留資格「技能実習」

開発途上国の外国人が、日本の進んだ技能・技術・知識を修得し、母国の経済発展に役立てることを目的とした制度です。
建設業においても多くの職種で技能実習生を受け入れることが可能です。

建設関係の職種例としては、型枠大工、鉄筋工、とび、土工、建築大工、左官、配管工、電気工事、建設機械・施工、塗装、防水施工などがあります。

技能実習生は、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)を中心に技能を習得するため、現場での実務に直接携わります。
ただし、単純労働ではなく、技能習得を目的としている点が重要です。

特定技能と技能実習の違いについては、こちらもご覧ください。
特定技能と技能実習の10個の違い。長所や注意点も知って検討を

在留資格「技能」

外国の優れた技能を持つ外国人が、その技能を生かして働くための在留資格です。
建設業においては、以下のようなケースが考えられます。

  • 外国建築:伝統的な自国の建築様式を用いた建築物の建設、修復などに従事する場合
  • 特殊な技能:日本にはない特殊な建設技術や技能を持つ場合

「技能」の在留資格は、一般的な建設作業というよりは、特殊な技能や知識を必要とする場合に該当します。

このように、建設業で外国人材を受け入れる際には、従事してもらいたい業務内容や、外国人の持つスキル・経験によって適切な在留資格を選択する必要があります。

建設業で外国人労働者を受け入れる方法については、こちらでも詳しくご紹介していますので、あわせてご覧ください。
外国人労働者を建設業で受け入れる方法や準備を解説!

まとめ:建設業で在留資格「技術・人文知識・国際業務」の外国人は雇用可能!

建設業でも、在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人を雇用することができます。

ただし、この在留資格は、高度な専門知識やスキルを必要とする業務に従事する外国人を対象としているため、注意が必要です。
具体的には、営業や通訳・翻訳など、その専門性を生かせる職種で雇用することができます。

単純な現場作業に従事させることはできないため、業務によっては別の在留資格での雇用が必要です。

建設業で雇用ができる在留資格としては他に、特定技能や技能実習、技能といったものがあります。
それぞれの在留資格でできる業務や要件が異なりますので、どのような業務に従事させるかを明確にし、自社に合った在留資格を持つ外国人の雇用を検討しましょう。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!

※このコラムは2025年4月の情報で作成しています。

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

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