JACマガジン

特定技能制度のポイント解説

2023/10/13

外国人労働者を建設業で受け入れる方法や準備を解説!

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

建設業での外国人の受入れを検討しているものの、どのように雇用につなげたらよいかわからないという企業も多いでしょう。

外国人労働者の受入れでは、在留資格の確認など注意すべきポイントもあります。

今回は、外国人労働者を建設業で受け入れる方法について解説します。
外国人労働者が母国を出て企業で働くまでの流れや、受入れの準備について確認しましょう。

外国人労働者を建設業で受け入れる方法は?

外国に住む労働者を日本の建設企業で受け入れるまでの一般的な流れを紹介します。

外国人労働者が日本の求人を見つける場所には、日系の新聞、雑誌・外国語のポータルサイトなどのメディアでの求人広告があります。

そのほか、日本で事業を展開している求人サービス企業のなかには海外展開しているところもあり、そちらのサービスを利用できるケースもあります。

公的機関の就職支援で有名なのは、厚生労働省の外国人雇用サービスセンター(Employment Service for foreigners)
日本での就職を希望する外国人留学生や、専門的・技術的分野の外国人労働者に対する職業相談や職業紹介を行っています。

まずは、そういった求人媒体や人材紹介会社、公的機関を活用して募集をかけます。

外国人からの応募があり、面接に進んだ場合は、在留資格の確認を行います。
仕事内容によって必要な在留資格が異なるため、不法就労を避けるためにも外国人労働者と受入れ企業の双方でしっかりと確認をする必要があります。

在留資格の確認が済んだら正式に書面での雇用契約を結び、ハローワークなどで厚生労働大臣宛てに「外国人雇用状況の届出」を提出します。

外国人労働者の入国後は、受入れ企業によるサポートが必要な場面も多いです。
住まいの確保や、給与受け取りに必要な銀行口座の開設、市区町村役場での住民登録手続き、携帯電話の手続きなど、手続き関係は外国人にとって複雑で難しいことが多いので、手伝いながら行えると良いでしょう。

建設業で外国人労働者を受け入れるメリット

建設業界は深刻な人手不足に直面しており、特に若い世代の人材が不足しています。

20~30代の体力のある若い世代の外国人労働者に力になってもらうことで、人材不足の改善や作業の効率化が図れる可能性があります。

また、外国人労働者を受け入れるには、丁寧なマニュアル作りや指導などが必要となるため、社内教育の一貫にもなります。

そのほか、企業の海外進出のきっかけになるケースや、海外視点での意見を聞くことで新しいアイデアが生まれた、というケースもあります。

建設業で外国人を受け入れる場合に必要な在留資格や可能な仕事の種類

仕事の種類によって必要とされる在留資格は異なります。
ひとつの業種内でも作業内容によっては制限されてしまう在留資格もあるため、確認は確実に行いましょう。

建設業に従事できる在留資格を紹介します。

技能実習

技能実習は、対象が開発途上国の外国人に限られます。
これは、開発途上国の人々に日本の知識や技能を身に付けてもらい、母国に持ち帰って経済発展を担う人材をつくるための国際貢献を目的としているからです。

技能実習には「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。

  • 企業単独型:日本の企業(実習実施者)が海外の現地法人や取引先企業の職員を受入れて技能実習を実施する
  • 団体監理型:商工会など非営利団体が技能実習生を受け入れ、実習実施企業で技能実習を実施する

技能実習制度の区分と在留資格は、企業単独型と団体監理型の受入れ方式ごとに異なります。

  入国1年目
(技能等を修得)
入国2~3年目
(技能等に習熟)
入国4~5年目
(技能等に熟達)
企業単独型 第1号企業単独型技能実習
(在留資格「技能実習第1号イ」)
第2号企業単独型技能実習
(在留資格「技能実習第2号イ」)
第3号企業単独型技能実習
(在留資格「技能実習第3号イ」)
団体監理型 第1号団体監理型技能実習
(在留資格「技能実習第1号ロ」)
第2号団体監理型技能実習
(在留資格「技能実習第2号ロ」)
第3号団体監理型技能実習
(在留資格「技能実習第3号ロ」)

技能実習では単純作業に従事することはできません。

建設関係で従事できる作業は、2023年2月現在、22職種33業種となっています。
とびや大工工事、型枠工事、石材加工、鉄筋組立などが作業の一例です。

技能実習生が行える作業については、公益財団法人 国際人材協力機構の「外国人技能実習制度とは 3.建設関係」をご覧ください。

また、技能実習生が仕事に従事できる期間は限りがあり、技能実習1号で1年間、技能実習2号で2年間、技能実習3号で2年間滞在することが許されています。

試験に合格して順調に進めば、最長5年間技能実習を行えるという仕組みです。

ただし、技能実習3号への移行・3号の受入れが可能なのは、優良の実習実施者の認定を受けた企業のみです。
認定されるには、外国人技能実習機構へ「優良要件適合申告書」を提出し、技能検定の合格状況や失踪状況、サポート体制などの審査を受け、条件をクリアする必要があります。

技能

在留資格「技能」は、産業上の特殊な分野に熟練した技能を持つ活動に従事できます。

外国特有の建築または土木の技能を持ち、5~10年の実務経験も必要です。

外国特有の建築または土木の技能とは、日本にはない技能のこと。
ゴシック、ロマネスク、バロック方式、中国式、韓国式などの建築・土木に関する技能や、
枠組壁工法、輸入石材による直接貼り付け工法などがそれに当たります。

在留期間は5年、3年、1年、3カ月のいずれかになり、出入国在留管理庁側によって、希望する在留期間や雇用主となる企業の規模や経営状況などから決まります。

身分または地位に基づく在留資格

身分または地位に基づく在留資格は「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「永住者」「定住者」の4種類。
もともと就労目的での滞在ではなく、結婚等で日本に長期間滞在している場合の在留資格です。

就労期限が無く、単純作業への従事も可能です。

資格外活動許可

本来は就労が禁止されている在留資格「留学」や「家族滞在」などの方が申請をすると、1週間につき28時間以内(教育機関の長期休業期間は1日8時間以内)で就労が可能です。
単純作業にも従事できます。

特定技能

建設業界の人材確保のために、一定の専門性・技能を有した即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格が「特定技能」です。

技能実習2号を良好に修了した後に、特定技能に切り替えることもできます。

特定技能は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つがありますが、特定技能2号は2023年2月現在、建設分野と造船・船舶工業分野の2分野のみでしか付与されていません。
※2024年5月追記:全16業種のうち、特定技能2号で受入可能な分野は、介護、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業を除く11分野となりました。

技能実習とは違い、対象となる国籍に定めがないのも特徴です。

特定技能1号の在留期間は通算で上限5年までとなっています。

特定技能について詳しくは「特定技能とは?外国人を受け入れるまでの流れや支援機関まで詳しく解説」をご覧ください。

建設業での外国人の受入れ準備について

建設業で外国人労働者の受入れを行う場合は、事前の準備が欠かせません。

特に、在留資格については十分すぎるほど確認を怠らないようにしましょう。
在留資格は就労可能なものであっても建設業での就労はできないケースや、建設業でも単純作業ができないといったケースもあります。

万が一、不法就労者を雇用した場合は、労働者も雇用者も罪に問われます。
場合によっては、入国管理局に問い合わせるなどの対処も必要です。

また、​​外国人を雇用する際には「外国人雇用状況の届出」を厚生労働大臣に提出する必要があり、提出しない場合は1名につき30万円の罰金が科されるため注意しましょう。

建設業の外国人の受入れでは労働環境の整備も重要

建設業で外国人を受け入れる場合、ソフト面・ハード面の労働環境の整備が重要です。

ソフト面の整備としては、職場の理解が挙げられます。
外国人がスムーズに日本で仕事をするためには、現場で働く日本人従業員の理解が不可欠です。
外国人労働者を雇用する意義を十分に理解してもらい、宗教・異文化への理解等も得ておく必要があります。

特に、宗教の問題は配慮が必要になります。
外国人受入れ時に知っておきたい宗教の考え方やトラブルを防ぐ対策については「外国人労働者の受入れで宗教に関する問題や配慮点を知っておこう」で詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。

次にハード面の整備には、安全な労働環境の整備が挙げられます。
建設業では危険を伴う仕事も多くあり、誰もが安心して働くための環境整備は重要です。

建設業では、外国人労働者が日本で安心して働くことができるようにするための取組みも行われています。
なかでも有名なのは、日本建設業連合会が行った「建設分野の特定技能外国人 安全安心受入宣言」です。

安全安心受入宣言は、高い技術を持った外国人労働者が安心・安全に働ける建設現場の構築を目指すもの。
「不法就労の排除」「現場の安全確保」「安心できる処遇」の3つの観点で以下のような取り組みを進めます。

【不法就労の排除】

  • 受入計画認定の確認
  • CCUS(建設キャリアアップシステム)の現場登録、技能者登録・事業者登録の確認
  • CCUS(建設キャリアアップシステム)登録内容の時点修正の確認
  • 現場における本人確認

【現場の安全確保】

  • 常時の日本語教育・安全教育
  • 現場における指示の徹底
  • 外国人が理解しやすい安全看板の採用

【安心できる処遇】

  • 適正な賃金・社会保険の加入
  • 相談を受けた際の対応
  • 違反企業への対応
  • 差別行為等の排除

※参照:建設分野の特定技能外国人 安全安心受入宣言(一般社団法人 日本建設業連合会)

外国人労働者が働きやすいと感じる環境は、日本人にとっても同じです。
建設業に携わるすべての人が安心して働ける環境を目指しましょう。

まとめ:建設業で外国人の受入れは準備や配慮が必要!在留資格にも注意

外国人労働者は、新聞などのメディアの求人広告や求人サービスを利用して日本での仕事を探すため、そういったサービスを活用して募集・採用を行いましょう。

企業は、雇用契約に進む前に在留資格の種類や従事できる仕事の内容をしっかりと確認する必要があります。

在留資格には労働範囲の制限をしているものや、そもそも就労を認めていないものもあるため、注意してください。
万が一、不法就労者を雇ってしまうと、本人だけでなく雇用した企業も処罰の対象となります。

受入れの際には、外国人労働者が働きやすい環境になるよう、ソフト面・ハード面の両方を整備。
安心して働ける環境作りは、日本人従業員にとっても有益なものとなるでしょう。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!

※このコラムは2024年5月の情報で作成しています。

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

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