JACマガジン

特定技能制度のポイント解説

2024/01/31

特定技能外国人の受入れの人数枠は?建設分野は人数制限がある?

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

日本の深刻な人手不足を解消するために2019年に創設された、在留資格の「特定技能」。
同じく在留資格の一つである技能実習では受入れに人数制限があるため、特定技能にも人数制限があるのかと疑問を持たれる方も多いかと思います。

今回は、特定技能の人数制限について解説します。
特定技能の場合も、分野によっては企業ごとの人数制限があったり、国全体での受入人数の上限が定められていたりと、人数制限に関して知っておいてほしいことがさまざまあります。
受入れの現状などについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

特定技能外国人の受入れ可能な人数枠(人数制限)を確認

特定技能は、日本の深刻な人手不足を解消するために設けられた、「専門の知識や技能を有し、高いレベルの日本語力を持つ、即戦力として働くことができる外国人」に与えられる在留資格です。

特定技能外国人には、受入れの人数制限はありません。
ただし、日本全体で2024年から5年間の受入れの見込み数は定められており、全業種では82万人です。

特定技能の受入人数は制限はされていないものの、不足するであろうと推測される人数に対してどのくらいの労働力があれば良いかという視点で、上限が定められています。
特定技能1号の受入れの人数見込み(受入れの上限)を、業種別に見ると以下の通りです。

  • 介護:135,000人
  • ビルクリーニング:37,000人
  • 工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業):173,300人
  • 建設:80,000人
  • 造船・舶用工業:36,000人
  • 自動車整備:10,000人
  • 航空:4,400人
  • 宿泊:23,000人
  • 農業:78,000人
  • 漁業:17,000人
  • 飲食料品製造業:139,000人
  • 外食業:53,000人
  • 自動車運送業:24,500人
  • 鉄道:3,800人
  • 林業:1,000人
  • 木材産業:5,000人

※参考:特定技能制度の受入れ見込数の再設定(令和6年3月29日閣議決定)

なお、介護分野と建設分野に関しては、企業ごとに受入人数の制限があります。
こちらについては、のちほど詳しく解説します。

特定技能と似た在留資格に「技能実習」がありますが、技能実習は「日本で技術を習得し、母国に持ち帰って生かす」という国際貢献のための在留資格です。

「外国人を企業で受け入れる」という点では共通しますが、技能実習には人数制限があります。
特定技能と技能実習の違いについては、こちらのコラムでさらに詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
特定技能と技能実習の10個の違い。長所や注意点も知って検討を

特定技能の建設・介護分野は企業・事業所ごとに受入れの人数枠(人数制限)がある

建設分野と介護分野では、受入機関ごとに受け入れることができる人数枠が設定されています。
受入人数について、それぞれ以下のように決められています。

  • 建設分野:1号特定技能外国人の数が、受入機関の常勤の職員(外国人技能実習生、1号特定技能外国人を除く)の総数を超えないこと
  • 介護分野:事業所で受け入れることができる1号特定技能外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること

介護分野の決まりにある日本人「等」には、介護福祉国家試験に合格済みのEPA介護福祉士の外国人、在留資格「介護」により在留する外国人、身分・地位に基づく在留資格により在留する外国人も含まれます。

さらに、建設分野では受入機関ごとに上限が定められている理由について、国が次の3つを挙げています。

  • 工事によって、建設技能者の就労場所が変わるため、現場ごとの就労管理が必要になる
  • 季節や工事受注状況によって、仕事の報酬が変動する可能性がある
  • 特に外国人に対しては適正な就労環境確保への配慮が必要である

受入機関(特定技能所属機関等)に対しても、以下のような条件等が課されています。

  • 外国人の報酬予定額等を明記した受入計画の作成
  • 国土交通大臣の審査・認定・巡回訪問による計画実施状況の確認
  • 受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録
  • 特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入

受入計画の認定を受けるためには、特定技能外国人を直接雇用する必要があり、待遇も同じ業務を行う日本人と同程度にするなど、条件は下記のようにほかにもいくつかあります。

  • 受入企業は建設業法第3条の許可を受けていること
  • 受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録
  • 特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入及び当該法人が策定する行動規範の遵守
  • 特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上、安定的な賃金支払い、技能習熟に応じた昇給
  • 賃金等の契約上の重要事項の書面での事前説明(外国人が十分に理解できる言語)
  • 1号特定技能外国人に対し、受入れ後、国土交通大臣が指定する講習または研修を受講させること
  • 国又は適正就労監理機関による受入計画の適正な履行に係る巡回指導の受入れ 等

※引用:国土交通省 建設分野における外国人材の受入れ

建設業で外国人を受け入れる方法については、以下のコラムでも詳しく説明しています。
外国人労働者を建設業で受け入れる方法や準備を解説!

特定技能外国人の受入人数の現状も知ろう

建設分野と介護分野以外では特定技能外国人の受入人数に制限はありませんが、現状ではどのくらいの人数を受け入れているのでしょうか。

参考に、出入国在留管理庁が発表した、特定技能在留外国人数(特定技能1号)をご紹介します。
※数値は速報値です。2023年12月末時点のデータに基づいて作成したものであり、今後数値が変わることもあります。

分野別

国籍別

この表を見ると、人材不足が顕著な業種ほど受入人数が多いといえます。

飲食料品製造業分野は機械で管理できる部分がほかの業種よりまだ限られており、人材確保の必要性が高いことが理由のひとつでしょう。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野も工場での作業に多くの人手が必要なため、他の分野に比べて受入人数は多いです。

建設業分野も人手不足が問題となっています。
現在「建設分野の特定技能外国人 安全安心受入宣言」など、日本で安心して働ける取組みも行われているため、特定技能外国人の受入れが増えています。

また、特定技能1号在留外国人の受入れで圧倒的に多いのがベトナム人。
次いでインドネシア人、フィリピン人となっています。
それぞれの国民性について、こちらのコラムでも詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ベトナムの国民性とは?性格やコミュニケーションのコツを紹介!
フィリピンの国民性とは?性格やコミュニケーションのコツを紹介!
インドネシアの国民性とは?性格やコミュニケーションのコツを紹介!

このほか、都道府県別にも人数が出されており、愛知県が17,632人と一番多く、次いで大阪府が13,275人、埼玉県が12,396人、千葉県が12,293人、東京都が11,360人という結果です。
主に地方都市よりも主要都市を中心に受入人数が多い傾向にあります。

まとめ:特定技能の受入人数枠に制限はなし。ただし建設・介護分野は制限を確認!

特定技能は日本の人手不足解消のために2019年に新設された在留資格で、技能実習と違い、受入人数の制限はありません。

ただし、人手不足の予測から計算した、受入れの見込み人数の上限は設定されています。
また、特定技能の中でも建設・介護は、受入機関の規模に合わせた人数制限が設定されています。

2023年現在、すでに多くの特定技能外国人が日本のさまざまな地域、業種で活躍しています。
建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!
特定技能外国人のご紹介も行っております。

※この記事は2023年2月の情報で作成しています。
※2024年5月追記

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

やさしい日本語講座1/16開催_F