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特定技能制度のポイント解説

2023/11/30

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?内容や利用方法を解説!

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

建設業界ではすでにご存知の方も多いであろう、建設キャリアアップシステム。
省略して「CCUS」と呼ぶこともあります。

建設キャリアアップシステムは、現在、さまざまな建設現場で取り入れられており、技能者・事業者のどちらにとっても、非常に重要なものとなっています。

しかし、登録には申請や費用がかかることなどから、未登録だという方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、建設キャリアアップシステム(CCUS)について解説します。
建設キャリアアップシステムの仕組みや目的、登録によって技能者や事業者にどのようなメリットがあるのかや、利用方法や費用についてもご説明します。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?目的や効果をご紹介

建設キャリアアップシステムとは、国土交通省が進める「建設業と技能者を支えるシステム」のことで、「Construction Career Up System」省略して「CCUS」とも呼ばれます。
建設業界のインフラとなるべく、環境の整備が進められています。

2019年4月にスタートし、2023年8月末時点で技能者は約126万人、事業者は約24万社が登録しています。
現在、加入は任意ですが、国は、2023年度中にあらゆる工事で建設キャリアアップシステムを完全実施することを目指しています。

建設キャリアアップシステムの仕組み

建設キャリアアップシステムとは、簡単にいうと「技能者のキャリアを見える化」と「事業者を適正に雇用する企業を評価」するシステムのことです。

建設キャリアアップシステムに登録すると、免許証のような形のCCUSカードが発行されます。
技能者は、現場に行く際にCCUSカードを持参し、カードリーダーでカードを読み込むだけです。
CCUSカードはレベル1からレベル4まで色分けされており、就業履歴や保持している資格などから、レベルに応じたカードが交付されます。

事業者は、カードリーダーで得られた情報で、技能者のレベルや職務経験を把握することができます。
所属する技能者のレベルや人数などは、施工業者の施工能力として評価され、評価団体や国土交通省のWebサイトで公表される仕組みです。

建設キャリアアップシステムがつくられた目的

日本では、建設業界も例に漏れず少子高齢化が進んでおり、若い世代の技能者数が少なく、短い期間で建設業を離れてしまうケースも多いです。

建設業界では一般の企業とは異なり、毎日違う現場で働くことも多く、技能者一人ひとりを横断的に評価するのが難しい環境です。

建設キャリアアップシステムは、技能者が持つ資格や技能、どのような現場でいつ働いたかがわかるので、相対的な評価をしやすい環境が整います。

また、事業者にとっては、技能者の登録がカード一枚ででき、現場ではシステムへカードを登録することで、いつだれが働いたかなどの出面管理もできて業務を減らすことができます。

これにより、技能者は適正な評価とそれにもとづく賃金を得やすくなり、事業者は、技能者を適正に評価し、育てる環境を整えていることが対外的に証明しやすくなります。

事業者にとっては、適正な職場環境を整えていることで仕事を受注しやすいといったインセンティブもあり、技能者にとっても安定して仕事ができる環境になるといえます。

建設キャリアアップシステムのメリットとは

建設キャリアアップシステムには、技能者・事業者にとってさまざまなメリットがあります。

それぞれ解説します。

技能者が建設キャリアアップシステムを利用するメリット

技能者が建設キャリアアップシステムを利用するメリットには、以下のようなものがあります。

  • 適正な賃金を得られる
  • 職場や住所が変わっても就業情報を引き継げる
  • 労務災害や賃金未払い発生時に役立つ
  • 建退共制度(建設業退職金共済制度)の積立がシステム連携により簡便になる
  • キャリアアップの計画が立てやすい

建設業界では現場が毎日変わることが珍しくなく、午前と午後で別の現場に行くこともあります。
建設キャリアアップシステムによって就業記録を一元管理できるため、適正な評価を受けやすく、賃金にも反映されやすくなるメリットがあります。

また、就業記録が残るため、万が一のトラブルの際の証拠として使えるという安心感もあります。

就業情報や資格情報は履歴が残るので、職場や住所が変わった場合や復職時などにも、キャリアがストップすることがありません。

建退共制度(建設業退職金共済制度)の電子申請システムとの連携により、就業履歴が退職金ポイントに反映されるなど、福利厚生にも寄与している点もメリットです。

建設キャリアアップシステムでは、「初級技能者(見習い)」「中堅技能者(一人前)」「職長として現場に従事できる者」「高度なマネジメント能力を有する者(登録基幹技能者等)」の4段階でカードを色分けしており、自分のレベルがわかりやすくなっています。

カードのレベルに応じた賃金支払い体系をつくっている企業もあり、キャリアアップを目指しやすい環境になります。

事業者が建設キャリアアップシステムを利用するメリット

事業者が建設キャリアアップシステムを利用するメリットには、以下のようなものがあります。

  • 事務作業の負担が減る
  • 技術力の高さを対外的に証明しやすくなる
  • 公共事業でインセンティブを受けられるケースもある
  • 人材が確保しやすい
  • 特定技能外国人制度が利用できる

カードの読み取りだけで出面管理が可能になり、電子申請システムとの連携により建退共の積立に関する作業負担も減るので、事務作業の負担が大幅に減ります。

どのくらいのレベルの技能者が何人在籍しているのかが一目見てわかるため、企業の技術力を対外的に示しやすく、信頼感が高まりやすいのもメリットです。

特に国や地方公共団体直轄の工事においては、建設キャリアアップシステムに登録している企業に加点するインセンティブを設けるところも増えてきており、受注機会の拡大が期待できます。

また、今後は発注先を登録事業者の中から選ぶといった選定基準を設けるケースも増えてくると考えられます。
登録することで機会損失のリスクを避けられる点もメリットです。

評価制度が相対的で非常にフェアなので、良い人材が集まりやすくもなるでしょう。

人材確保の面では、ほかにも建設キャリアアップシステムを利用することで、特定技能外国人制度が利用できるメリットもあります。
優れた技能を持つ外国人を受け入れることができる特定技能外国人制度ですが、利用条件として建設キャリアアップシステムの導入が義務付けられています。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、「外国人労働者を建設業で受け入れる方法や準備を解説!」もぜひご覧ください。

建設キャリアアップシステムの利用方法や費用もご紹介

建設キャリアアップシステムを利用するためには、技能者と事業者はそれぞれ事前登録と利用料金が必要です

技能者の登録方法と登録にかかる費用

自身で申請・登録するほか、所属する事業者の担当者などによる代行申請も可能です。
申請方法は、インターネット、郵送、窓口の3つがあります。

建設キャリアアップカードの発行には登録料が必要です。
カードの有効期限は発行より9年経過後の最初の誕生日までで、申請時に60歳以上の方は同14年目の誕生日までとなります。
※本人確認書類未提出者はカード発行から2年目の誕生日までが有効期限

技術者の登録申請方法と必要書類について、詳しくは「「技能者情報登録申請書」の手引」もご覧ください。

【技能者の登録に必要な費用】

  • インターネット申請:2,500円(簡略型)、4,900円(詳細型)
  • 認定登録機関:4,900円(詳細型)

※すべて税込
※カード再発行は1,000円

事業者の登録方法と利用に必要な費用

事業者の登録は、自社の担当者が行う方法、元請け・上位下請けの担当者による代行申請があります。 申請方法は、インターネット、郵送、窓口の3つです。

登録の有効期限は5年間で、登録が完了した日から5年後の登録月末までが有効期限となります。

事業者の登録申請方法と必要書類について、詳細は「「事業者情報登録申請書」の手引」もご覧ください。

【事業者登録料】

事業者が建設キャリアアップシステムを利用するために必要な登録料です。
登録料は事業者の資本金額をもとに決定されます。

事業者の資本金額 登録料
一人親方 0円
500万円未満(個人事業主含む) 6,000円
500万円以上1,000万円未満 12,000円
1,000万円以上2,000万円未満 24,000円
2,000万円以上5,000万円未満 48,000円
5,000万円以上1億円未満 60,000円
1億円以上3億円未満 120,000円
3億円以上10億円未満 240,000円
10億円以上50億円未満 480,000円
50億円以上100億円未満 600,000円
100億円以上500億円未満 1,200,000円
500億円以上 2,400,000円

※すべて税込み

【管理者ID管理料】

建設キャリアアップシステムで利用する事業者情報を管理するために必要な、管理ID利用料金です。
1IDあたり11,400円(税込・一人親方の場合は2,400円)で、毎年かかります。

利用可能期間は、取得または更新日から1年後の取得日の属する月末までとなっています。

【現場利用料】

現場に入ったときに、現場のシステムを利用するのにかかる料金です。
1人・1現場あたり10円(税込)がかかります。

<現場利用の請求例>

10人の技能者が30日就業した場合:10人×10円×30日=3,000円
A現場に午前と午後それぞれ入場した場合:1人×10円=10円
同一元請けのA現場、B現場に午前と午後にそれぞれ入場した場合:1人×10円×2現場=20円
元請けが異なるA現場、B現場に午前と午後にそれぞれ入場した場合:1人×10円×2現場=20円

まとめ:建設キャリアアップシステムとは技能者・事業者を支える仕組み

建設キャリアアップシステムとは、国土交通省が進める建設業界におけるインフラシステムです。
技能者と事業者をそれぞれ盤石な体制でサポートします。

技能者にとっては、キャリアが適正に評価されるため、賃金にも反映されやすく、安心して働けるという点は大きな魅力でしょう。

また、事業者にとっても、出面管理などの事務作業の負担軽減やインセンティブを受けられる点など非常にメリットが大きいです。

建設業界における人材不足解消のために取り入れられた、建設キャリアアップシステム。
人材確保解決のための取り組みのひとつである特定技能外国人制度を利用するためには、登録は必須です。

建設特定技能受入計画の認定要件のひとつとして、受入企業・1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が必要です。
JACでは、令和5年4月1日より「CCUS手数料支援」として、特定技能外国人を雇用する事業者の管理者ID利用料、特定技能外国人の能力評価手数料の費用負担をサポートしています。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!

※この記事は2023年8月の情報で作成しています。

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。