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特定技能制度のポイント解説

2024/02/15

特定技能外国人を雇用する際に実施する「生活オリエンテーション」とは?

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

特定技能外国人が日本での生活に困らないよう実施するのが「生活オリエンテーション」です。

生活オリエンテーションは、外国人が安心して日本で生活し、働き続けるために必要なものなので、受入企業に実施が義務付けられています。

今回は、この生活オリエンテーションについて解説します。
生活オリエンテーションの実施目的や実施内容、必要実施時間や注意点についてもお話ししますので、ぜひ参考にしてください。

特定技能外国人の雇用時に実施する「生活オリエンテーション」とは?

「生活オリエンテーション」とは1号特定技能外国人に対し、受入企業が日本での生活に必要な情報を提供することをいいます。
1号特定技能外国人支援計画の記載事項の一つで、実施は必須となっています。
なお、2号特定技能外国人については10の義務的支援は不要となります。
10の義務的支援:生活オリエンテーションを含む、特定技能外国人に対して実施しなければならない支援

生活オリエンテーションは1号特定技能外国人が入国した後に行うものですが、技能実習から特定技能に変更する場合など、在留資格を変更した場合にも必要です。

生活オリエンテーションの目的は、日本のルールやマナーを外国人に知ってもらうことにあります。

生活オリエンテーションで教える内容は、買物の仕方や銀行でのお金のおろし方などから、道路のルールといった法律、就業に関する契約や届出といった内容まで幅広くあります。

日本での生活や文化を知ってもらいトラブルを防ぐとともに、安心して長く働き続けるために必要であることから、生活オリエンテーションの実施が義務付けられているのです。
なお、任意的支援についても「1号特定技能外国人支援計画」に記載した場合には支援義務が生じます。
※任意的支援:生活オリエンテーションの中で実施が義務付けられている支援に加えて、可能であれば実施することが望ましいとされる支援(例:行政機関での手続きへの同行、定期面談等での追加実施など)

実施方法は、対面のほか、オンライン、録画した動画を視聴する方法などがあります。

実施者は原則、受入企業となっていますが、支援委託契約を締結した登録支援機関であれば生活オリエンテーションの実施を委託できます。

特定技能外国人へ実施する生活オリエンテーションの内容は?

生活オリエンテーションの内容は、生活の細かいルールから法律まで多岐に渡ります。
提供する内容には多くの項目があり、内容もさまざまです。

一例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

項目 具体的な項目 内容
日本での生活全般に関する内容 金融機関の利用方法
  • ATMの使い方
  • 銀行口座の開設方法・閉鎖方法
  • 海外への送金の仕方 等
医療機関の利用方法
  • 病院の受診方法
  • 受診時の持ち物(健康保険証等)
  • 健康保険証が無い場合の自己負担について
  • アレルギーや宗教上の理由で制限がある場合の対処法 等
交通ルール
  • 歩道の歩き方
  • 乗り物の運転ルール(自転車、オートバイ、自動車)
  • 運転免許の取得方法
  • 保険加入の案内 等
交通機関の利用方法
  • 通勤での交通手段の利用方法
  • 定期券や交通系カードの使い方 等
生活ルールとマナー
  • ゴミの捨て方
  • 街中での喫煙の注意
  • 夜中は静かに過ごすこと 等
生活必需品の購入方法
  • スーパーやコンビニなどの店の場所
  • 自動精算レジの使い方 等
気象情報や災害時の情報入手方法
  • 気象災害や災害が起きた時の情報収集方法
  • 情報発信しているサイト 等
日本での違法行為の例
  • 在留カードの提示について
  • なりすましの禁止
  • 自己名義の銀行口座や携帯電話を他人に譲渡することが犯罪となること 等
国や地方自治体に対する手続き 所属機関等に関する届出
  • 受入企業との契約に関する届出
  • 受入企業の倒産に関する届出 等
住居地に関する届出
  • 在留資格変更や転居の際の住居地変更に関する届出 等
社会保障および税に関する手続き
  • マイナンバーの手続き
  • 社会保障に関する手続きと社会保険の仕組み
  • 所得税等の納税と仕組み 等
その他の行政手続き
  • 自転車が盗難・撤去された場合の手続き
  • 国民健康保険等の手続き 等
相談や苦情の申し出先 相談や苦情の申出に対応する担当者の連絡先
  • 担当者の連絡先 等
相談や苦情の申出をできる国や地方公共団体の機関の連絡先
  • 地方出入国在留管理局や労働基準監督署、警察署、市区町村役場、大使館・領事館などの連絡先 等
医療に関する内容
  • 外国人の受入れ体制が整っている医療機関
  • 医療通訳雇入費用などをカバーする民間保険の案内 等
防災や防犯、急病時の対処方法
  • トラブルの対応策、予防方法
  • 緊急時の連絡先
  • 通報や救急要請の仕方 等
法的保護に関する内容
  • 入管法令や労働関係法令に関する知識
  • 特定技能雇用契約に反することが行われた場合の相談先と連絡方法 等

上記に挙げた内容はあくまで例であり、受入企業や生活エリアによって必要な情報は異なります。
それぞれの1号特定技能外国人のケースに合わせた情報提供が必要です。

特定技能外国人へ実施する生活オリエンテーションは何時間必要?

1号特定技能外国人へ実施する生活オリエンテーションは、少なくとも8時間以上行うことが必要と考えられます。

8時間に満たない場合は、生活オリエンテーションの実施が認められないことがあるため注意が必要です。

生活オリエンテーションは、日本の生活に慣れている外国人に対しても実施する義務があります。
実施が4時間未満の場合は、適切に生活オリエンテーションが行われていないと判断される可能性があり、出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」では、次のように記載があります。

技能実習2号良好修了者、留学生等を同一機関で引き続き特定技能外国人として雇用するような場合であっても、相談又は苦情の対応者の連絡先、緊急時における対応に必要な事項、外国人の法的保護に必要な事項など必要な情報について十分に理解させる必要があります。
なお、このような者であって生活環境に変化がない場合であっても、4時間に満たないようなときは、生活オリエンテーションを適切に行ったとはいえません。
引用:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」

特定技能外国人へ生活オリエンテーションを実施する際の注意点

1号特定技能外国人への生活オリエンテーションは、特定技能外国人が日本での生活に困らないようにするのが目的であるため、十分に理解してもらうことが必要です。

以下の点に注意して、行うようにしましょう。

母国語で対応できる・理解しやすいサポート体制を整える

生活オリエンテーションは、十分に内容を理解できる言語で行います。
特定技能外国人の母国語のほか、日本語でも本人が十分に理解できる言語であれば問題ありません。

1号特定技能外国人は、日本語のレベルは一定程度保持しているという前提ではありますが、使い慣れない単語はわからないということが十分に起こり得ます。

雇用する特定技能外国人の母国語で資料を作成したり、情報提供のサイトは母国語で対応しているものを共有したり、必要に応じて通訳の配置を検討したりするなどの工夫をしましょう。
容易で理解しやすい説明になるよう事前に考えおくなど、体制を整えておく必要もあります。

また、生活オリエンテーションはオンラインや動画視聴でも実施可能ですが、質問を随時受けられるようにし、疑問を確実に解消できるよう準備しておくことも重要です。
必要に応じて手続きに同行するなど、きめ細かなサポートも必要です。

生活オリエンテーションの確認書を保管しておく

生活オリエンテーション実施後は、「生活オリエンテーションの確認書」に署名を行い、保管しておかなければいけません。

以前は提出義務がありましたが、令和4年3月31日より提出不要(要保管)に変更となり、受入企業もしくは登録支援機関に支援を委託していた場合は、登録支援機関が保管します。

生活オリエンテーションの確認書は、出入国在留管理庁の様式があります。
記載例もあるので、チェックしてみてくださいね。

生活オリエンテーションのほかにも、日本では特定技能外国人を受け入れる際にさまざまなルールを理解してもらう必要があります。

例えば、年に1回実施される健康診断がありますが、外国人の方の中には「血液検査をしたくない」などの理由から、拒否される方がいらっしゃいます。
その場合、日本では年に1回、健康管理のために健康診断が義務付けられていることや、費用は受入企業が負担することなどを丁寧に説明する必要があるでしょう。

外国人労働者の受入れを考えている建設業の方は、ぜひこちらのコラムもご覧ください。
外国人労働者を建設業で受け入れる方法や準備を解説!

まとめ:1号特定技能外国人には原則8時間以上の生活オリエンテーションの実施が必須!

1号特定技能外国人が日本の生活に困らないよう、日本での生活のルールや法律などの情報を提供する「生活オリエンテーション」の実施が義務付けられています。
対面のほかオンラインや動画視聴でも構いませんが、8時間以上の実施が必要と考えられています。

十分理解してもらうための言語に対応できる体制や、質問に答えられるサポート体制を整えておくことも重要です。
生活オリエンテーションの内容によっては、同行して教えることも必要になるでしょう。

生活オリエンテーションの実施後は、定められた様式で「生活オリエンテーションの確認書」に記入をし、受入企業が保管しておかなければいけないことも、覚えておいてくださいね。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!
特定技能外国人のご紹介も行っております。

※この記事は2023年12月の情報で作成しています。

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

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