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2025/12/19

日本人従業員向け「外国人共生講座2025」やさしい日本語講座(応用編②)開催レポート

2025年10月16日「やさしい日本語講座 応用編②」

JACでは、2025年5月から全6回にわたり、日本人従業員向けの「外国人共生講座」を開催しています。昨年2,000名以上にご参加いただいた人気シリーズ「やさしい日本語講座」の応用編として、9月の「応用編①」に続き、10月16日(木)に「応用編②」をオンラインで開催しました。

本講座では、講師に(株)BREXA CrossBorderの河元氏を迎え、「やさしい日本語の作り方や指示の出し方」の復習から、外国人社員の職場定着に直結する「コミュニケーション」と「会社でできる取り組み」に焦点を当てました。最後に毎回人気のゲストコーナーが設けられました。

復習:「易しさ」と「優しさ」を兼ね備えた「やさしい日本語」

まず「やさしい日本語とは?」を改めて振り返りました。「やさしい」には、「易しい(わかりやすい)」と「優しい(思いやり)」のふたつの意味があります。これは外国人だけでなく、医療や介護の現場でも注目されており、誰にとっても優しいユニバーサルデザインの考え方です。

講座では、基本の「はさみの法則」(はっきり、最後まで、みじかく切って話す)を復習し、応用編①で扱った「伝わりやすい指示の出し方」の重要性も再確認しました。
詳しくは「基礎編」「応用編①」をご覧ください。

日本人従業員向け【3】「やさしい日本語講座(基礎編)」開催レポート
日本人従業員向け【4】「やさしい日本語講座(応用編①)」開催レポート

信頼を築く!「優しい」コミュニケーションの具体的な工夫

「やさしい日本語にすると冷たい印象になる気がする」という声があります。日本語特有のやわらかい表現を失う分、「気配りや優しさ」を補う必要があります。企業で役立つ工夫が紹介されました。

安心感を育む挨拶と配慮

外国人社員から「挨拶しても返ってこない」という声が聞かれるように、挨拶を返すことや、名前を呼ぶことは、仕事へのモチベーション維持に不可欠です。表情、目線、相槌など、聞き方への配慮が、忙しい現場ほど安心感を生み出します。

セミナー資料:安心感を育む挨拶と配慮

「質問しやすい」空気づくり

早期の問題解決と職場定着のためには、コミュニケーションしやすい雰囲気づくりが重要です。

  • わからないことは「わかりません」と素直に言える環境。
  • 間違いを恥ずかしいと思わせない工夫。
  • 「すごいねー」と積極的に褒めて成功体験を積ませる。
セミナー資料:質問しやすい空気づくり

話すことの難しさを理解し、「待つ」

外国人は日本語を組み立てるのに時間がかかります。たどたどしい日本語でも子供扱いはせず、少し長めに待ってあげる「おおらかな気持ち」が大切です。簡単なやさしい日本語での声掛けを実践し、信頼と安心感を培いましょう。

セミナー資料:話すことの難しさを理解し、待つ

「異文化理解講座」の内容も含めたチェックリストをご用意しました。
ぜひ、自社の取組みの振返りにご活用ください。

セミナー資料:チェックリスト

定着を促す「企業でできる教育・現場の工夫」

現場でのコミュニケーションを円滑にし、定着を促すための具体的な取り組みも紹介されました。

現場で使う「語彙の統一」

方言なども含め、ひとつの指示でも様々な語彙が飛び交う現場では、使う言葉を統一する工夫が有効です。現場で使っている会話を視覚化し、どのように「やさしい日本語」に変えるか書き出す実践も提案されました。

セミナー資料:現場で使う語彙の統一

他にも、実際に現場で取り組んでいる事例の紹介がありました。
チェックリストがありますので、企業内で工夫してみてください。

セミナー資料:現場の取り組み事例

日本語教育Q&A

よくいただくご相談から、いくつか紹介がありました。

日本語の効果的な指導方法を知りたい
→終業後や休日は人が集まりにくいという実情から、勤務時間内に日本語クラスを開催することが効果的です。

どんなことを教えたらよいか?
→限られた時間で成果を出すためには、以下の3つを考慮して教える内容を絞り込むことが成功の鍵となります。

  • 本人の希望
  • 現場のニーズ
  • 会社の評価

まとめ:「共生」を成功に導く二つの柱

応用編②で学んだのは、外国人社員との「共生」を単なる業務遂行に留めず、相互理解と定着につなげるための具体的なアプローチです。

1.「易しさ」を「優しさ」で補うコミュニケーション

指示を「はさみの法則」で分かりやすくするだけでなく、冷たい印象を与えないよう、「挨拶」「名前を呼びかける」「質問しやすい雰囲気づくり」「待つ姿勢」といった心のこもった配慮で信頼関係を築くことが不可欠です。

2. 定着を支える会社・現場の仕組みづくり

個人の努力だけでなく、現場で使う「語彙の統一」や、教育効果を高めるために「勤務時間内の日本語クラス」を実施するなど、会社として体制を整えることが、外国人社員の安心感と成長を支えます。

ゲストコーナー:ベトナム人社員の視点から学ぶ成功のヒント

ゲストコーナーには、ベトナム人のロンさんが登壇。留学生として来日し、農業法人で現場リーダーを務めた経験から、外国人就労者の本音を語っていただきました。

モチベーションとリーダーシップ

トマト栽培から1年で現場リーダーに昇格したときは、能力が認められて嬉しかったと語るロンさん。
高齢者スタッフにやさしい日本語を用いたことで作業効率が向上した経験を共有。

ベトナム人気質について

ベトナム人は、自分のやり方を優先するし、注意されると心を閉ざす人が多い。
また、後のことは考えず、いま楽なことを重視する傾向がある。
日本で仕事をするには継続的な教育が必要で、相互理解を深めていく事が大事。
一時的な教育ではなく、継続することで習慣化させることがポイントだそうです。

企業と外国人就労者の関係性について

ルールの意味を説明されることで納得して仕事ができ、評価が明確だと目標ができてやる気が出るとロンさんは感じているそうです。
怒られるより、「どうしたの?」と聞いてもらえることで、信頼関係が生まれます。

学習意欲の向上とキャリア

ベトナム人は将来の見通しがあるとやる気が出る傾向があり、「日本語ができると将来の選択肢が広がる」という話をよくするそうです。キャリアプランを描く機会を提供することが、学習意欲の向上につながると強調されました。

ベトナム人は日本語の発音が難しい?

北部と南部で違いがあり、北部では語尾が強くなりやすく、南部では最後の一文字が発音されないことや、「や・ゆ・よ」の発音が難しい傾向があることも紹介されました。
相互理解のために「聞く側」の日本人も知っておくべきだと提言されました。

ゲストコーナー:ベトナム人社員の視点

ゲストコーナーは、現場で活かせる知見が多く、受講者にとって非常に興味深い内容でした。

次回はいよいよ最終回「生活/指導講座」です。
見逃した方は、アーカイブをご覧くださいね。
2025年度 日本人従業員向け「外国人共生講座」

お問合せ:(株)BREXA CrossBorder 担当:三浦
e-mail:
Tel: 090-3150-0562

本記事は、2025年10月16日(木)に開催した日本人従業員向け「外国人共生講座2025」の「やさしい日本語講座 応用編②」の開催レポートです。

セミナー動画

セミナー資料

セミナー資料_やさしい日本語講座(3) 応用編②251016.pdf
Q&A_やさしい日本語講座(3) 応用編②251016.pdf

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。

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