JACマガジン

外国人労働者との働きかた

2023/02/09

外国人労働者雇用で発生しやすいトラブルと対処法を解説!予防策も紹介

工場で汗を手で拭っている男性の写真

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の円倉です。

外国人労働者を雇った際に、文化の違いからトラブルに繋がることも少なくはありません。
トラブルへの対応を誤ると訴訟に発展することもあるほか、他の従業員のモチベーションも下がってしまいます。

今回は、外国人労働者の雇用で発生しやすいトラブルについて解説します。

対処法やトラブルを未然に防ぐための予防策もご紹介しますので、外国人労働者を受け入れている企業や、これから受け入れる予定の企業はぜひ参考にしてください。

外国人労働者の雇用で発生しやすいトラブル・基本ルールに関するトラブル

外国人労働者の雇用で起こりやすいトラブルの例を、原因と対処法もあわせてご紹介します。

在留資格に関するトラブル

雇用後に、働くことができる在留資格を有していなかったり、雇用後に在留期間が満了してしまい在留資格を失うようなトラブルです。

在留資格を有しない方を使用した場合、事業主も不法就労助長罪に該当し、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

<出入国管理及び難民認定法 第七十三条の二>

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  • 一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  • 二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
  • 三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

引用:e-GOV 法令検索「出入国管理及び難民認定法 第七十三条の二

【原因】

雇入時や在留期間の更新時に、会社がどのように対応するかが決められていないことが原因で生じることが多いです。

【対処法】

まず雇入時に、労働施策総合推進法28条1項に基づき、在留カードを確認し、雇用状況の届けに必要な情報を把握するとともに、働くことができる在留資格を有することを確認します。

また、単に在留資格を有することを確認するだけではなく、会社で行ってもらう予定の仕事を行うことができる在留資格を有するかを確認しましょう。
働くことができる在留資格を有しない場合には、雇い入れをすることはできません。

雇入後においても、在留期間の更新を忘れないようにしましょう。
特に、在留期間が長期にわたる場合、在留期間の更新を忘れてしまうことがあります。
うっかり在留期間を経過してしまわないよう、注意しましょう。

日本語に関するトラブル

日本語能力試験などの基準を満たしている外国人労働者を雇ったものの、会社内で日本語を用いたコミュニケーションに課題が生じ、業務効率の低下や対立などのトラブルに繋がるというケースがあります。

日本語でコミュニケーションが円滑に行えないことで、業務で行き違いになったり、人間関係が悪化してしまったりする事例もあるようです。

【原因】

日本語能力試験は読む能力と聞く能力を判定する試験です。
会話をしたり、文字を書いたりする能力は測れないため、「話は理解できるが、会話が苦手である」という状況が生じ得ます。

また、日常会話程度は話せても、専門用語が多いために話すのが難しいというケースもあります。

【対処法】

採用時に面接を行い、「会話」に関する日本語能力を確認することが考えられます。
今はオンラインでの面接も可能なので、話す力を求める場合はぜひ取り入れてください。

専門用語が多いことが理由で話せない場合は、専門用語と解説を外国人労働者の母国語と簡単な日本語でまとめた単語集を作るなどのサポートも必要です。

特に、労働安全衛生に関する言葉は重要です。
KY活動に用いる用語など、労働安全に関する用語については、できる限り会社がサポートして円滑なコミュニケーションを行うことができる環境を整えることが望ましいといえます。

また、日本語教師の資格を持った専門家に日本語学習指導をしてもらったり、日本人の社員へ外国人従業員に対する伝わりやすい話し方を指導したり、施設・作業器具・作業に対する外国語表記の冊子を作成するなどの対応もとれます。

JACでは、特定技能1号外国人や、特定技能1号の取得を目指す技能実習生に向けて、無料の日本語講座を開催しています。
初心者から上級者まで、各レベルや目的に合わせた様々なコースをご用意しています。
外国人に日本語を学んでもらうことで、外国人従業員の安全管理をしやすくなるほか、社内コミュニケーションの円滑化や仕事の効率化にもつながります。

外国人従業員の日本語能力が向上したことで、社内の雰囲気が良くなり、日本人の定職率が上がったという声もいただいています。
外国人従業員を含め、社内の従業員皆さまがコミュニケーションをとりやすい環境づくりを、「JACの無料日本語講座」を通してサポートいたします!
JACの無料日本語講座

急に辞めてしまう・音信不通になる

外国人だけではなく、日本人と共通した事項ですが、突然仕事に来なくなったり、音信不通になることがあります。
外国人の場合は届出が必要になったりと、日本人と異なる対応が必要となるため、注意が必要です。

【原因】

賃金の低さ、仕事内容の不満、人間関係が上手くいかない、日本になじめないなど、さまざまな原因があります。

【対処法】

受入れが困難になった場合、出入国在留管理に届出することが必要となることがあります。
事件や事故に巻き込まれている可能性もあるので、警察へ届出等を行うことも検討します。

突然の離職を防ぐ意味でも、不当な労働条件での労働をさせることがないように十分な注意が必要です。
また、賃金や労働環境への不満を含め、人間関係のトラブルや日本の生活になじめないといった個人的な悩みも相談しやすいような環境作りをしましょう。

具体的には、コミュニケーションを密に取ったり、相談窓口を設置したりするなどしてサポート環境を整え、異変を早く察知できる体制が必要です。

従業員間でトラブルが起きたときは?

建設現場でトラブルになり、責任者が従業員を叱責している写真

外国人労働者同士、または日本人従業員と外国人労働者との間でトラブルが起こることもあります。
文化や宗教、人種の違い、領土問題、植民地支配のなごりなど、さまざまな原因があります。

トラブルが起きた際には、両者から話を聞き、両者の言い分を公平な目で判断することが大切です。
宗教や人種・民族の違いが戦争に発展することもあるほどナイーブな話題であるということを理解しておく必要があります。

外国人労働者との契約時・解雇時に起こり得るトラブルは?

作業着の人の手とスーツの人の手が両手で握手している写真

外国人労働者を雇用する際のトラブルを未然に防ぐためには、契約時や社内ルールの説明は「わかりやすく」「簡単に」「明確に」行うことを意識しましょう。

特に契約時の対応は重要になります。

雇用契約書が日本語のみで説明がわかりにくいと、思い違いにより「実際の雇用状況と契約の内容が違う」と言われてしまう可能性が高まります。

わかりやすい日本語で記載するようにし、必要であれば母国語でも記載するなどの対策が重要です。
雇用時に対面で伝える際にも、漏れがないよう確認しながら説明しましょう。

雇用後も、日本独特の「空気を読む」や「察する」といったことは通用しません。場合によっては、外国人労働者の母国語を使っての説明や、通訳を介しての会話も必要です。

また、外国人労働者の雇用時には「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(外国人指針)」も確認しましょう。

外国人指針は、外国人労働者の受入事業主が、外国人労働者の雇用管理の改善等に関して講ずるべき措置を定めたものです。

具体的には、次のような内容について定められています。

  • 外国人労働者の募集および採用の適正化
  • 適正な労働条件の確保
  • 安全衛生の確保
  • 雇用保険・労災保険・健康保険および厚生年金保険の適用
  • 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等
  • 解雇の予防および再就職援助
  • 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

外国人労働者と受入企業間で相互理解を深め、外国人労働者に安心して日本で働いてもらうためにも、外国人指針に基づいた対応は必須です。

外国人労働者の受入れが初めてで不安があるという場合は、弁護士や外国人人材紹介サービス会社など、プロに委託する方法もあります。

まとめ:外国人労働者の雇用でのトラブルは正しい原因解明と適切な対処が大切

文化や人種が異なる外国人労働者の受入れは、円滑に業務を進めていくためにも、外国人労働者と受入企業間での相互理解が大切です。

万が一トラブルが発生してしまった場合、原因や対処法を知っておくことで大きなトラブルに発展するのを防ぐことができます。

起こりやすいトラブルとしては、在留資格や日本語に関するトラブルが挙げられます。
また、外国人労働者に限ったことではありませんが、急に辞めてしまったり、音信不通になってしまうといった例もあります。

外国人労働者と受入企業間でコミュニケーションを取りやすい環境を整備し、在留資格については、企業側での確認事項、対応をしっかりと定めておくといった対策が必要です。

話し合ったり、説明をしたりする際は「わかりやすく、明確に」がポイントです。
難しく感じる場合は、弁護士や外国人人材紹介サービス会社など、プロに委託するのもいいでしょう。

特定技能外国人の受入れをお考えの建設企業様は、JACに気軽にご相談ください!

※このコラムは2022年10月の情報で作成しています。

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部

円倉 駿一

まるくら しゅんいち

神奈川県出身。
毎月、日本の建設会社やそこで働く特定技能外国人を取材して、記事をWebで発信しています。
ブログでも、建設技能外国人制度のことや日本で暮らすヒント、そして取材できいたおもしろい話などをみなさんにご紹介します。取り上げてほしい話題があったら、ぜひご連絡ください!

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