JACマガジン

外国人労働者との働きかた

2023/02/28

外国人労働者と円滑なコミュニケーションを取るための対策は?

会議室でホワイトボードを使って会議し、コミュニケーションを取っている4人の社員

こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。

外国人労働者と円滑なコミュニケーションを取りたいけれど、なかなか難しいと感じている企業も多いでしょう。
コミュニケーションがスムーズにできないことで起こりやすいトラブルもあり、業務に支障をきたしてしまうケースもあります。

そこで今回は、外国人労働者とのコミュニケーションで起こりやすい問題や、円滑なコミュニケーションを取るための対策をご紹介します。

日本で外国人労働者が増加傾向にある理由とは

厚生労働省による「外国人雇用状況」調査によると、2022年10月現在で、日本で働く外国人は1,727,221人。
前年から2,893人増加し、2007年に「外国人雇用状況」の届出が義務化されて以降、最高を更新しました。

外国人労働者が増えた理由としては、日本の労働力不足を解消するため、日本が国をあげて外国人の受入れ体制を整えていることが挙げられます。

また、日本で働きたいと考える外国人が増えているという側面もあります。

日本は賃金が高く治安が良いことや福利厚生が手厚いことも理由となり、日本で暮らしたいと考えている外国人が増えています。

賃金に魅力を感じて日本で働くことを考える外国人も多かったものの、円安の影響により、他の国も候補としてあがりやすく、他国との競争は高まっています。

外国人労働者と受入企業間で起きやすいコミュニケーション問題

外国人労働者が日本で働く際には、コミュニケーションを取るうえで起こりやすい問題や、外国人労働者が抱えやすい悩みがあります。

代表的なものをご紹介します。

言葉が通じない

外国人労働者が日本語でのコミュニケーションに不慣れだと、うまく伝えられない外国人労働者自身も、うまく外国人労働者の伝えたいことを理解できない企業側もコミュニケーションにストレスを感じてしまいます。

日本語がスムーズに伝わらないことで作業に支障をきたすばかりでなく、外国人労働者にとっても、言葉がわからないことにより孤独感を抱いてしまうケースもあります。
また、建設業や農業、漁業など、働く業界によっては安全衛生面でのリスクも大きく、うまく意思疎通ができないことで、命に関わる事故が発生してしまう可能性もあります。

外国人労働者の日本語能力だけが問題なのではなく、受入企業側が外国人労働者の母国語に対応できないことも課題ではあります。
ただ、さまざまな国の外国人労働者がいることを考えると、それぞれの国の言語に受入企業側が合わせるよりも、日本語の習得を目指してもらうのが得策です。

日本語能力を上げるための解決策としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 社内で日本語を学ぶ研修を行う
  • 日本語学校に通ってもらう
  • 日本語能力検定のレベルに合わせた報奨金制度をつくる

外国人労働者の日本語能力向上を目指すには、日本語を学習する機会を増やすほかありません。

実際に企業が取り組んでいる例としては、行政主催の無料の日本語学校に外国人労働者を連れて行ったり、日本語で交換日記をしたりしてコミュニケーションを図りながら日本語の習得も目指すといったものがあります。

研修等を自社で行うのが難しい場合や、即戦力が欲しいという場合は、入社時の採用条件に求める日本語のレベルをあらかじめ設定しておくなど、入社前の対策が必要です。

日本語の微妙なニュアンスが伝わらない

日本語は理解していても、日本語独特のあいまいな言い回しや「察する」「空気を読む」といったコミュニケーションはうまく伝わらないことが多く、誤解が生じやすいです。
この点は、日本語を母国語とする者同士でさえも、勘違いなどでトラブルに発展しやすい部分ではないでしょうか?

日本人は言いにくいことを思いやりのつもりで遠回しに伝えることがありますが、外国人にとってはとくに結論がわかりにくく、誠実でない印象を与えてしまうこともあります。

解決策は、あいまいな言い方はせず、端的にわかりやすく伝えることを1番に考えることです。
日本人同士のコミュニケーションでも共通する部分ではありますが、結論を先に伝え、その後に理由を話したほうが理解してもらいやすいでしょう。

文化や価値観の違い

文化的な価値観や宗教の違いから、仕事に対する考え方が大きく異なるケースがあります。

たとえば、日本では自分が手が空いていたら他の人の仕事を手伝うという光景はよく見られますが、ある国では「他の人の仕事はその人のものであり、手伝うことは仕事を奪うことになるのでやってはいけない」という考えの場合もあります。

解決策としては、「日本で当たり前だと思っていることは、他の国では当たり前ではないかもしれない」という意識を持つことがひとつです。
「郷に入っては郷に従え」と、外国人労働者に日本人の文化や価値観を押し付けることはせず、お互いの文化や宗教を理解し、尊重することが大切です。

価値観の押し付けはよくありませんが、会社として「ここは守ってほしい」というところは明確にし、丁寧に教えて理解してもらうことも必要です。

実際の取り組み例としては、外国人労働者の母国の文化紹介や外国語講座を通して異文化理解を深めたり、生け花教室や伝統的な祭りへの参加から日本の文化を知ってもらうというものがあります。

孤独を感じやすい

日本語がわからないことや文化の違いなどから、慣れない日本での暮らしに孤独感を募らせてしまうことがあります。

解決策としては、日本語の習得や文化・価値観の違いのすり合わせとともに、外国人労働者に日本での生活を楽しいと感じてもらう体制を整えることが大切です。

企業の取り組みの例としては、地域の祭りなどのイベントに一緒に参加したり、母国といつでも連絡が取れるよう社員寮にWi-Fiを設置したり、日本語習得能力の高い労働者をリーダーとしたグループチャットをつくり交流を図ったりするといったものがあります。

外国人を受け入れている企業さまの先進事例」では、他にもさまざまな工夫や取り組み事例をご紹介しています。
外国人労働者とのコミュニケーションに課題を感じたら、ぜひ参考にしてみてください。

そのほか、外国人労働者の雇用で発生しやすいトラブルについては、下記コラムで解説しております。
あわせてチェックしてみてくださいね。
外国人労働者の雇用で発生しやすいトラブルと対処法を解説!予防策も紹介

外国人労働者と円滑なコミュニケーションを取るための考え方

浴衣を着て観光している人たちの後ろ姿


外国人労働者と日本人が円滑なコミュニケーションを取るには、積極的に関わっていくことが大切です。

外国人労働者の日本語能力を上げることも重要ですが、心理的に安心感を持って仕事をしてもらうことも同じくらい大切です。

外国人労働者の母国語の簡単なあいさつを覚えて話しかけたり、母国や文化について話を聞いたりするのもよいでしょう。

言葉が伝わりにくいと感じる場合は、ジェスチャーやわかりやすいイラストを取り入れるのも有効です。
紙に書いて伝えてみたり、翻訳ツールを使ったりしてもよいので、積極的にコミュニケーションを取ってみましょう。

日頃からコミュニケーションの機会を増やすことに加えて、月に1回程度、日本語で文章を書く課題を出すのも有効です。

文章作成といっても、難しい文章ではなく、交換日記のようなものでも大丈夫です。
日本語のスキルアップにつながるだけでなく、外国人労働者の想いや悩みに触れられる機会にもなります。
日本での暮らしに不安を抱いている場合は、そこが解決の糸口になる可能性もあります。

JACの取材に応じてくださった外国人労働者の受入企業さまでは、コミュニケーションに関して、次のようなポイントを挙げています。

  • 相手の文化を理解し、深く付き合う
  • ギブ&テイクが関係性を高める秘訣
  • 気持ちに寄り添うことが大切 など

「日本人だから」「外国人だから」と考えず、「人と人とのコミュニケーションである」という考え方を持つことが、円滑なコミュニケーションの秘訣です。

まとめ:外国人労働者とのコミュニケーションには積極的なかかわりが大切

近年、日本の外国人受入れの体制が整ってきたことなどから、日本で働く外国人は増えています。

外国人労働者が働くうえで、問題になりやすいのが、言葉の壁や、文化・価値観の違い、日本語のあいまいさ。
また、日本での慣れない暮らしなどから、孤独を感じてしまう外国人労働者も多くいます。

外国人と円滑にコミュニケーションを取るには、積極的なかかわり合いが大切です。

会社が主体となってイベントや日本語学習の機会を提供したり、異文化コミュニケーションへの理解を深めたりする必要があるでしょう。

日本で働いているのだからと、日本の価値観を押し付けてしまうのはよくありません。
企業理念として守ってほしいことや、働くうえで大切な考え方などは、わかりやすいことばで丁寧に説明し、理解してもらうことも必要です。

建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください

私が記事を書きました!

一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任

加納 素子

かのう もとこ

愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。