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建設業で人材不足が起こっている理由は?その対策も詳しくご紹介!
こんにちは、JAC(建設技能人材機構)の加納です。
建設業界の人材不足は年々深刻化しています。
社会のインフラとして重要な建設業において、なぜそのようなことが起こっているのでしょうか。
また、人材不足を解決するための対策はあるのでしょうか。
今回は、建設業で人材不足が起こっている原因や解決策について解説します。
建設業での人材不足の現状や理由とは
国土交通省の調査「国土交通省の最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業就業者数はピーク時である1997(平成9)年の685万人から、2021(令和3)年は約29%減の485万人。
建設投資額がピークを迎えた1992(平成4)年の84兆円から、2021(令和3)年は58.4兆円と約31%減(見通し)であるため、建設業界自体の仕事は縮小しているとはいえ、人材不足は慢性的な問題となっています。
人材不足の原因としては「建設業全体の就業者数の減少と高齢化」「円安による外国人労働者の不足」が挙げられます。
建設業全体の就業者数の減少と高齢化
なかでも若年層の就業者の減少が著しく、同じく国土交通省の資料において2021(令和3)年度における建設業就業者の55歳以上の割合は35.5%、29歳以下が12%と高齢化が進んでいます。
ちなみに、全産業における55歳以上の割合は31.2%、29歳以下の割合は16.6%なので、建設業では特に若年層が不足していることがわかります。
このことは、いわゆる「2025年問題」と呼ばれる問題にもつながります。
2025年問題とは、第一次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた団塊の世代の方が、75歳、つまり後期高齢者となり、医療費や介護費などの社会保障費が増大すると予想される問題のことです。
2021(令和3)年度の調査で建設業における55歳以上の割合は35.5%ですが、なかでも60歳以上は25.7%を占めることがわかっています。
60歳以上が全体の4分の1以上を占めていることになりますが、10年後は大半が引退していることが予想されます。
元々、日本全体でも若年層の人口減少という問題があります。
加えて、インターネットの普及により、建設業以外にもさまざまな仕事が存在するようになり、その分ほかの選択肢も増えました。
「働き方改革」などによって改善されつつあるものの、建設業には長時間労働の問題もあります。
年間の総実労働時間は、建設業は全産業に比べて340時間以上長く、約20年前と比べると短くなっているものの、全産業に比べると減少幅が少ない点も問題です。
円安による外国人労働者の不足
建設業のみならず、人材不足解消のため外国人労働者を受け入れている日本では、円安による影響も深刻です。
日本における外国人建設技術者の賃金は、ここ数年は月額20万円程度で推移しているのに対し、外国人労働者の出身国として多いベトナムでは高ければ月額15万円程度に上昇しています。
円安のため、ドル建て換算すると日本の賃金は著しく低下。
日本とベトナムの賃金格差が狭まったことで、「わざわざ日本に来て働くメリット」が薄れているのが現状です。
ベトナムを例に出しましたが、他の国でも同じような傾向が見られます。
建設業で人材不足を解決するための行政の対策もチェック!
建設業の人材不足を解決するために、国土交通省では「労働者の処遇改善」「働き方改革の推進」「生産性の向上」を同時に進めていくことを推進しています。
1. 労働者の処遇改善
危険を伴う作業が多く、雇用条件が良くないというイメージがあるため、そのイメージを払拭すべき取り組みが進められています。
まず、下請労働が多い建設業界では、社会保険未加入である労働者が多いのも問題です。
社会保険は病気やけが、老後の生活を手厚く保障する制度。
労働者は社会保険に加入する義務があり、企業は社会保険に加入させる義務があります。
社会保険への加入は、労働者にとって年金が増える・家族を扶養できる・遺族年金が受け取れるなどメリットが大きい反面、社会保険料は企業が費用の半分を負担することから、企業側にとっては経費負担が多いのが課題。
しかし、労働者の処遇改善のためには社会保険加入は徹底すべきという考えのもと、社会保険未加入の建設企業は建設業の許可・更新を認めないしくみが作られています。
また、安全性の向上を目指し、安全衛生経費が適切に支払われるような取り組みや、安全に働けるしくみ作りとして技術研修・パトロール・個別指導を行うことも推進されています。
2. 働き方改革の推進
日本全体で労働環境を見直すために進められている「働き方改革」。
長時間労働の是正もこれに含まれます。
長時間労働の問題解決のためには、まずは適切な休日設定が必要です。
国土交通省は、国が直接管轄する工事等においては週休2日制を原則としています。
無理のないスケジュールで働くためには、適切な工期設定も重要です。
中央建設業審議会が工期に関する基準を作成し、工期を細分化してかかる日数を見積もることが求められるようになりました。
必要とされる工期よりも著しく短い工期が設定されている場合は請負契約の締結を禁止し、違反した場合は勧告を受けます。
また、幅広い人材確保のために若年層や女性も働きやすいよう、出産・育児も考慮した柔軟な働き方を推進したり、若年層や女性労働者を対象に実習経費や賃金への助成率の引き上げ等なども進められています。
3. 生産性の向上
長時間労働の改善にもつながるのが、生産性の向上です。
日本全体で労働人口の減少は進んでおり、人材不足は今後も変わらず課題として残ることを考えると、生産性の向上は急務の課題と言えるでしょう。
生産性の向上のために必要なのは、まずは有限である人材の有効活用です。
次に、ICT建機やツールの活用など、DXの推進です。
人の手を使う必要がない業務は、機械やツールに任せることで人手不足を解消。
ドローンやロボットなどを活用することで、危険な業務に従事するリスクを減らすことができ、精度の高いデータを得ることも可能になります。
人の手を使う必要がない業務は、機械やツールに任せることで人手不足を解消。
ドローンやロボットなどを活用することで、危険な業務に従事するリスクを減らすことができ、精度の高いデータを得ることも可能になります。
大型の機械やシステムの導入には多額の費用がかかるため難しいというところもあるでしょうが、たとえば打ち合わせはオンライン化するなど、費用を抑えて始められるところから取り組んでみると良いでしょう。
打ち合わせにかかる移動時間を減らすことができ、録画をしておけば後から見直すこともできます。
建設業の人材不足に対する実際の対策例をご紹介
建設業では、人材不足の対策に取り組んでいる企業が多くあります。
いくつかご紹介します。
【対策例①】テクノロジーの活用による省人力化
資材搬送など、負担が大きいわりに単純な業務は、ロボットなどを導入して自動化。
貴重な労働力を他の業務に割くことができ、けがなどのリスクも減少している例です。
現場ではICT端末を利用した連絡・管理を行い、業務をスムーズにし、適切な管理体制を整えることにも成功しています。
【対策例②】女性が活躍できる場面を増やす
検査工程にかかわる女性職員によるチームを結成し、きめ細かいチェックを可能に。
男女問わず利用できる育児休業制度やフレックスタイム制度を導入することで、家事や育児、介護などをしながら働ける環境を整えています。
【対策例③】部門の垣根を超えた人材育成と配置を行う
資材部門や建築部門、土木部門、監査部門、営業部門など、部門別に配置を行うと、専門性が磨かれる反面、業務の忙しさでばらつきが出てしまうという弊害があります。
そこで、部門を越えた柔軟な人材配置と人材育成を実施。
資格手当の支給なども行い、多角的な知識・経験をもった人材の育成を推進しています。
【対策例④】特定技能外国人の受入れを行う
国が日本の人材不足解消を目的として、2018(平成30)年に可決・成立した改正出入国管理法により新たな在留資格として創設された「特定技能」。
2019年4月より受入れが可能となっています。
特定技能の導入により、特に人材不足が顕著であると認められる分野において、外国人労働者の就労が可能となりました。建設分野も含まれています。
この特定技能外国人を受け入れることで、人材確保をする企業も増えています。
特定技能は、一定の専門性・技能・日本語能力を有することが条件。
つまり、即戦力として就労可能であるということです。
技能実習2号を良好に修了した場合、技能実習から特定技能へと在留資格を変更することもできます。
そのため、在留期間を延長して働くことや、母国に帰国した技能実習修了者を呼び戻して雇用することもできるようになりました。
特定技能については「特定技能外国人制度の概要」で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
日本ではコロナ禍において外国人への厳しい入国制限がありましたが、緩和の動きが速まっているため、今後、より雇用が進むことも期待できるでしょう。
まとめ:建設業の人材不足対策は急務!実例などから対策を考えよう
日本全体の労働人口が不足するなか、特に顕著なのが建設業界です。
人材不足だけでなく、建設業で働く人のうち4分の1が60歳以上という高齢化の問題もあります。
人材不足の理由としては、建設業以外の仕事の選択肢が増えたこと、円安による外国人労働者の賃金メリットが薄らいでしまったことなどが挙げられます。
人材不足を解決する対策としては、労働者の処遇改善や、長時間労働をなくす働き方改革の推進、作業の効率化などが挙げられます。
実際に、すでにさまざまな取組みを行っている企業も多く、改善を進めることで労働者だけでなく、企業にとってもプラスとなっている事例も多いようです。
人材確保の解決策として、特定技能外国人を雇用するのもひとつの方法。
特定技能は在留資格のひとつですが、一定の技能や日本語能力をもっていることが条件なので、即戦力として受入れが可能です。
建設業界で特定技能外国人の受入れをお考えの企業様は、JACにお気軽にご相談ください!
※このコラムは2022年12月の情報で作成しています。
私が記事を書きました!
一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 管理部(兼)調査研究部 主任
加納 素子
かのう もとこ
愛知県出身。
広報・調査研究業務を担当し、SNSの中の人。
SNSでは、日本を好きになってほしい、日本から世界へ建設の魅力を伝えたい、世界から選ばれる日本の建設業でありつづけるためにという思いをもって日々更新中。
また、アジア諸国における技能評価試験の実施可能性などの調査業務に従事し、各国の現地機関とのヒアリングを行っている。